私達は何度かの使徒との戦いに勝った。
あの鈴原がエヴァパイロットになったり、使徒だったフィフスがシンジの説得でパイロットを続行、そのまま消えたエヴァ四号機を呼び寄せたり、なんだか色々としっちゃかめっちゃかなことになっていた。
それがイイことなのか、悪いことなのか分からないけど....。
多分悪いことではないとは思う。
でも、私にとってはあまり気に入らない状況だったりする。
だって特別だったはずのエヴァパイロット...チルドレンがそう易々となっていく奴らを気持ち良く迎える気にはなれなかった。
でも、そんなこと言ってても使徒は来る。だけど、またやって来たら私は全力で迎え撃つだけ。
そして、また明日にも使徒が現れるかもしれない。
そんなことを考えてた夜。
…今日に限ってシンジの帰りが遅い。
いつもはいの一番に帰ってきて、家事をしていたり、自分の部屋に居たりするのに。
何やってんの?
なんとなく気になって携帯電話でネルフ諜報部に問い合わせてみる。
「サード・チルドレン、唯今ロスト中です。」
…ロスト?
なんで?
シンジ、何しているの?
なんでロストしてたりするの??
私の心は一抹の不安に駆られた。
私はテレビを見ながらシンジの帰りを待った。
待つ義理なんてないのに…。でも、何故だか分からないけどすごく気になる。
「ただいま…」
シンジがいつもながらの気のない声をして帰って来た。
私は急いで玄関の所まで行って、シンジに適当な話をしてみた。
シンジはだるそうにしながらもなんとか上手く話に乗ってきた。
なんとか他愛無い話から、気になっていた事…今日シンジがロストした訳…を、追求すべく、シンジに聞いてみた。
…今まで何してたワケ…?帰りが遅いから諜報部に問い合わせたらアンタ、ロストしてたじゃない。諜報部も追えない所に行って…。
「………」
シンジは黙り込んだ。
………………
…ナニソレ?
何で何も答えないの?
聞いた事が不愉快だったの?それとも聞いてはいけない事だったの??
今までシンジは聞かれたコトにはきちんと正直に答えてくれた。
黙っていたり、ごまかそうとするのはめったにある事じゃなかった。
それに…いつも私の悪態やお世辞にもいいとは言えない口調での話にも付き合ってくれた。
バカがつくほど正直で優しいシンジが私は好きだった。
でも今日はいつもと態度が違う。常に監視を怠らない諜報部からロストした後というのも引っかかるけど…何か…隠し事…?
それが何だか分からないけど、でもその態度!!許せない!!
あれこれ言葉での攻撃の手を休めずに続けた。でもシンジはその度に無視したり、話をはぐらかしたりした。そして最後にはムスっとしてまったく相手にしなくなった。
そんな態度を取り続けていたシンジに私はとうとう話すのを止めた。
黙って突っ立っている私をよそにムスっとした顔して自分の部屋へ行こうとシンジがスタスタとダイニングキッチンを歩いていった。
私はその様子をじっと見た。
…シンジと目があった。
…でもシンジはその視線をそらしてしまった。
そのままシンジは自分の部屋に行ってしまった。
一人、ダイニングに取り残された私は…
………シンジに拒絶されてしまった…そんな寂しくて悔しい気持ちだけが残った。
翌朝、警報がなった。…使徒が現れたらしい。
命名された名はサキエル。
あまり、戦闘に乗り気じゃなかった。
なんだか昨日からイヤな気分を引きずっていたから。
それでもどうせ戦いに出なくちゃいけなんだろうな…そんな風に思っていた。
…でも、実際私は戦闘に出られなかった。
シンクロ率がシンジやフィフス、さらに鈴原よりも低かったから。
……
…私は初めて作戦から外された…。
ファーストと一緒に待機…。
信じられない…。
使徒との戦いはどうやら勝ったみたいだけど私は全然私嬉しくなかった。
なんであいつらなんかよりシンクロ率が落ちたの?
なんで作戦から外されたの?
この私が!!
………………
理由は分かっていたけどあんまり腹が立ったから考えるのをやめた。
朝から意気消沈、やる気もなく気分も少し落ち込み気味。
理由は分かっていたけど、でもやっぱり考えたくもなかった。
バカシンジとはあの夜から一言も口を利いてない。
シカトされたのもムカつくけど何よりもその後のアイツの何事もなかったかのように暮らしているのがイヤだ。
気持ち悪い。私から口、利きたくない。利いてやるもんか!!
それに私が目の前にいてもシンジは口を開くことも見ることもない。そのまま何事もなかったかのようにご飯食べてお風呂入ってバカ鈴原と一緒にガッコに行ったり。
…私のことは眼中にないってワケ?
…バッカみたい。
私はその日一日中ベットに横になった。
何かするのがバカみたいだったから。
目が醒めた。
…もう夜。
お風呂…入ってなかったから気持ち悪い。しかたないからお風呂に入った。
…上がったらダイニングにいつの間にか来ていたヒカリと…
…シンジがいた。
…二人して楽しそうに話してる。私なんか居ないみたいに…。
それよりもこの二人、最近仲がいい。
しかも、ヒカリ…いや、シンジもなんだか腫れ物触るみたいに私に近寄らなくなった。
なるべく私を無視するようにしているみたい。
それはそれで構わないんだけど、でも、コイツは…バカシンジは、私に話しかけないのにヒカリとは話すんだ。
一通り話し終えてヒカリが私に話しかけてきた。
……ウザイから無視してやった。
ヒカリは少し落ち込んだみたいだったけど…
…でも、なんだか許せない、今はヒカリにも口を利きたくない。
私が無視した後ヒカリはまたシンジに話しかけてる。
シンジもヒカリも何事もなかったみたいにまた話してる。
…私は腫れ物か? 気分悪い…!!
話し終えて…帰ろうとしていたヒカリを私は思いっきり睨みつけた。
そして…シンジが今さら私をじっと見てきた。
知らない!!
みんな、ウザイ…ヘドが出る…ムカツク…!!!!
シンジの視線を無視してそのまま私は家を飛び出した。
…何も考えないで町を歩いた。
サイレンが鳴ってる。使徒が現れた…みたい。
でも私は戻らなかった。
知らないわよ…使徒なんて。
どうせ、フィフスか鈴原…ファーストもいるし何よりあのバカシンジがいるじゃん。
みんな勝手にやればいいのよ!!
それに…。
それに、今さら戻ってもチルドレンの中で多分私が一番シンクロ率が低いもん…。
そしてフィフスや鈴原がいるから私はまた作戦を降ろされて、みじめな思い、するだけ…。
結局、電車を乗り継いだり、あちこち歩き回った挙句、諜報部に見つかって連れ戻された。
帰りたくない家。
だってシンジがいるから。
ミサトもいるし。
最悪…。もう、イヤ。
今の私にエヴァとのシンクロ率なんてどのくらいあるか分からない。
作戦から一度外されて、使徒が現れても帰らなかった。どのツラ下げて顔見せろっていうの?
それに…今は誰とも顔、合わせたくない…。
でも、またどこかに行く気力がない。
朝からずっとベットに横になった。
もうイヤ。もうココに居たくない。
どのくらい寝てたのかな?
なんだか長い間腐ってたような気がする…。
…こんなこと、ドイツに居た頃はなかったんだけどな…。
なんだか体がだるい…寝すぎかな…。
ずっと寝ててさらに疲れたような感じ…最低ね。
一度お昼にお風呂入ったような気がする…ご飯は…食べたっけ?
もう夜…かな?
あれ?部屋の明かりが付いてる?
私、部屋の明かり付けた覚えない…
…シンジ?
なんでシンジが私の部屋にいるの?
…何か思いつめたみたいに考え込んでる…。
なんだか…自分の部屋なのに居づらくなったから部屋から出ようと思った。
部屋の戸の前まで行こうとしたら…
…シンジにいきなり抱きしめられた…
「ち…ちょっと!!いきなり何すんのよ!!」
私は驚いて、わめいた。
シンジは悲しそうな、寂しそうな顔をして私を見ていた。
シンジは何か囁いたけど私は混乱していてよく聞き取れなかった。
そして、そのままシンジは部屋を出て行った。
私はどうしていいのか分からなかった。
とりあえず、シンジを追う様に部屋を出て行った。
シンジはリビングにひっそりと突っ立ていた。
どう声をかけていいのかいいのか分からない。
私はじっとシンジの方を見た。
視線に気がついたのか、シンジはこちらを向いた。
…なんともいえない表情…。
私はそんなシンジの表情を見て、何か、いたたまれない気持ちになって視線を逸らした。
しばらく、どうしようもなく二人して突っ立ってたけど、シンジが私の方に近づいてきた。
私はシンジの方を向いた。なんとも言いがたい表情。
私がまじまじとシンジの顔を見ていたらシンジは何も言わずに私を抱きしめてきた。
…なんで抱きしめるの??どうして??
シンジは相変わらず何も言わない。
「ねえ、何でこんなことすんの?」
私はシンジに尋ねた。
「…ごめん。
心配だったんだ。ずっと。
でも、どうしようもなくて…」
そうシンジは言って、下を向いた。
…そっか…心配…だったんだ。
よく考えたら私ってずっとイライラして、一人で怒って、一人で落ち込んでたっけ…。
もしかしたら私一人で腐ってただけかな…。
「…そう、私も悪かったわ…」
そうシンジに言った。そう、一人よがりだったんだ。私。
…って、ちょっと待ってよ??
ここでふと、疑問に思った。
元々私がこーなった原因ってシンジが私をシカトしてたからじゃなかったっけ??
ってぇいうか、アレ、なんだったのよっ?!
ロストしてたアレは何なのよ!!!
「…ねぇ、シンジ。ちょーっと、聞きたい事があるんだけどさぁ。
アンタ、遅く帰ってきた日さぁ、
…何やってたのよ??」
「えっ…何って…」
…ここでシンジの顔色が変った。
私はピーンと来た。
「…アンタ…もしかして…」
「知らないよ!!僕、世界のヒミツなんて何も知らないんだよ!!」
…はぁ??
私はファーストか、ヒカリか、どっか他の女の所にしけこんでたかと思ったのだけど…。
っていうか、自分で口割ってる???
「てか…アンタ、機密情報調べてたワケ?!
大した身を守るスキルも知らないクセに?!?!?」
「あ、いや、その…あの…」
シンジが先ほどとはうってかわってものすごぉぉぉぉく、たじろぎ始めた。
「バッカじゃないの!!アンタ!!
アンタなんかエヴァに乗らなきゃただの中坊じゃん!!
そんなに死にたいワケ!?
誰にけしかけられたか知らないけど、
機密情報なんか追っかけたりしたらそのうち死ぬわよ!!」
なんだか落ち込んでいたのがバカバカしくなってきた。
私はこの後、延々とシンジに説教を言って、二度とアホな世界のヒミツなんかを追わないように確約を取ってから、その後にシンジに食事を作らせ、久しぶりの多飯をかっ食らって、その日はゆったりお風呂に入って、寝た。
まぁバカバカしい理由だったけど、でもすっかり私の心のわだかまりは取れたわけで。
…まぁ、バカシンジが世界のヒミツを追いかける気になった原因を後で突き止めるとして、シンジとその日から口を利くようになったのは言うまでもない。
数日後、加持さんが青い顔をして、ネルフ本部の廊下を歩いていた。
「あれ??加持さん??こんにちは。
どーしたんですか??顔色悪いですよ??」
「あ…いやな。何でもないんだ。気にしないでくれ。」
加持さんはお愛想笑いをつくって見せた。
はは~ん、そーとー"どこかの秘密結社"に追い詰められてるのね~。
ふーん。
私は心の底で意地悪く笑ったけど、まぁ、寛大な私は一応、加持さんに一言、言っておくことにした。
「そーですか。
あ、そーそー。
これ以上機密を調べたら、加持さんその内、命なくなりますよ~??
…ま、止めませんけど。
あ、シンジ巻き込んだら殺すんで。
じゃ、お仕事がんばってくださいね~♪」
私は百万ドルの笑顔でそういうと顔色をますます悪くさせた加持さんを放置して、初号機の前に待ってるシンジの元に向かった。
ま、釘は刺しておいたわよ??釘は。
でも、今度シンジ巻き込んだら知ったこっちゃないわ!!
END