- 浅間山地震観測所 -
「深度、1200、耐圧隔壁に亀裂発生!」
「葛城さん!」
「壊れたらうちで弁償します。 …あと200。」
「モニターに反応!」
「解析開始!」
「観測機、圧壊、爆発しました。」
「解析は?」
「ギリギリで間に合いましたね。 …パターン青です。」
「…間違いない。」
「使徒だわ。」
今日は学校は休み。
…正確には私のいるクラスの生徒達は修学旅行へ出かけて私とセカンド、碇君は使徒襲来に備えて第3新東京市に残る事になっていた。
セカンドはそれがとても不満だったようだけど私は元々知っていた事なので特に気にもかけてなかった。碇君の方は予測していたらしく、私同様、あまり気にしていないようだった。
私達チルドレンは学校が無い事を理由にネルフでのパイロット及びエヴァとの接続に関するデータ集めと、学校での成績不良を理由にネルフスタッフによる特別講義…これもセカンドは気に入らないらしいけど…の為にネルフに呼ばれる事になった。
私は出かける為に部屋のドアを開けたらセカンドが腰に手を当てて立っていた。
「ちょっとファースト!!
部屋のインターホン壊れてるじゃないの!!
今度直しておきなさいよね!!」
開口一番、セカンドはそう言った。
「…どうしてここにいるの?」
私は少し疑問に思ったのでそう尋ねた。
セカンドはそれを聞くと鼻を鳴らしてから胸を張り出して言った。
「アンタを迎えにきてやったのよ!!
私とアンタとバカシンジは今日はネルフから召還だからね!
それに放置しとくとアンタまた辛気くさい生活してそうだし。
その監査も兼ねてよ。」
セカンドの物言いは相変わらず強気の言い口調だった。
「そうそう、アンタ、こないだ水着買ったでしょ?
ネルフ行ったら泳ぐわよ!!
持って来なさいよ!」
…セカンドは今日、ネルフに呼ばれた理由を忘れたのだろうか?
エヴァとの接続のテストだけではないのに…。
「…特別講義は受けないの?」
「アンタ、成績悪いワケ?」
私が尋ねたらセカンドは質問で返して来た。
「…いえ。特に問題ないわ。」
「…じゃあ大丈夫ね!!」
何が大丈夫なのか分からないけど、とにかくセカンドが水着を持ってくるようにと言ったので着る場所も学校では着れないし、私は水着を持って行く事にした。
水着は先日買ってから値札が着いたまま、私の部屋のチェストの中に入っていたのを水着を入れる為の袋…これはセカンドが水着入れるのにいいと一緒に買うように薦めた物だけど…それに入れて持って来た。
「…持って来たわ。」
「よしよし。 お勉強会はバカシンジだけで十分なのよ。」
セカンドは満足そうにそう言った。
…そういえば碇君はどうしたんだろう?
セカンドが碇君の名前を少しだけ出したので気になった。
一緒に暮らしているなら私とでなく碇君と一緒に来てもいいのではないのかと思った。
「…碇君は一緒じゃないの?」
私がそう尋ねたらセカンドは一瞬目を細めたけどいつもの表情になって言った。
「何? アンタ、シンジが気になるの?」
「いいえ。
一緒に暮らしているのに一緒に来なかったから気になっただけ…。」
私がそう言うとセカンドは再び鼻を鳴らして少し歪んだような、自嘲的というんだろうか? そんな笑みを浮かべて言った。
「…一緒に暮らしているからっていって、
一緒に出かけなきゃいけないってことないわよ。」
…私はこの言葉に返す言葉は特に思い浮かばなかったのでそのままセカンドに「いきましょう」と言ってネルフに向かう事にした。
私達がネルフのゲートに着いた時に碇君と出くわした。
碇君は私達が一緒にいるのを見て驚いたような表情をした。
「…あ…、やぁ、綾波。アスカと一緒なんだ…。」
「ええ。」
セカンドは驚いたような碇君を見て目を細めて皮肉の篭ったような言い方で碇君に言った。
「あら、シンジ。意外にお早い到着ね。
ぐっすり寝てたようだから大幅な遅れで到着するかと思ったわ。」
これを聞いた碇君は少し不愉快そうな顔をしてセカンドに言った。
「別に…。目覚ましセットしておいたし。
…そんな事言うなら起こしてもいいんじゃないの?」
それを聞いたセカンドは同じく不愉快そうな顔つきで言った。
「…別にアンタを起こす義理はないわ。」
「…行かないの?」
…私は何かこの二人はあまりいい雰囲気ではない…というんだろうか? で会話しているように見えたので途中で口を挟むような形で先に行くように促した。
碇君とセカンドはそのまま黙って先を急ぐようにゲートのカードリーダーにネルフのIDカードをスリットさせて行った。
私は二人の後を追う形でカードリーダーにIDカードをスリットさせた。
私達は途中まで一緒にネルフ施設の通路を歩いてたけど通路が二手に別れた所でセカンドが立ち止まって碇君に振り向いて言った。
「じゃ、私らこっちだから。」
「え? 特別講義のある第二会議室ってこっちじゃないの?」
これを聞いたセカンドはニヤリと笑って(この前セカンドがこの笑い方をした時に「碇司令の笑い方みたい」と言ったら「ニヤリ笑いっていうのよ」と言ってこの笑いをした。)言った。
「お勉強会はアンタ一人だけ。
私らはプールで泳ぐの。」
「なんで? アスカだって成績悪かったじゃないか。」
碇君は不可解だと言いたげに言った。
これを聞いたセカンドはさらに先程のニヤリ笑いを深めて言った。
「だーって、ファーストは成績不良じゃないって言ってるし、
私は習うことなんかないも~ん。」
これを聞いた碇君は「何故??」と言わんばかりの顔をした。
セカンドはこの顔を見て普通に、そう、すましてというのだろうか? 言った。
「…悪いけど今時あんな数式使う物理…違う、理科だったわね? や数学に興味ないわよ。
私が大学行ってた頃なんかもっと複雑な数式使って計算してたわ。」
「…大学????」
碇君の顔はますます「わからない」という顔をした。
…大学…そういえばセカンドは去年大学を卒業したんだ。私はセカンドチルドレン来日の際の資料でセカンドのプロフィールの項で見たのを思い出した。
「去年卒業したのよ。アンタ、努力足らないわ。少しは勉強しなさいよ。
…じゃあね。」
そう言ってセカンドは二手に別れた道の片方の方へ歩き出した。
「…碇君、私も行くわ。
…じゃあ。」
私は碇君をその場に残してセカンドの後を追った。
私とセカンドは更衣室で着替えをしていた。
セカンドは着る部分が二つに別れた…ツーピースというらしいけど、の水着を着ていた。
私は白いワンピースと呼ばれる水着。セカンドと一緒に買う時に「ドシンプル過ぎるんじゃない??」と言われたけど私は「これでいい」と言った。
…それにしても…、さっきセカンドはまるで碇君を嫌厭するような態度を取っていたような感じに私には取れたけど…どうしてだろう?
「…あなたは碇君と仲が悪いの?」
私が先程から…いえ、朝セカンドが迎えに来たときにも思ったのだけどその事を尋ねるとセカンドは少し驚いたよう顔をして言った。
「…アンタがそんな事聞くとは思わなかったわ。」
そしてセカンドは何でもないと言わんばかりの表情で言った。
「…ただアイツがいるとイライラするだけよ。
…大体アイツ自体も私の事は気にも掛けてないからいいんじゃないの?」
「…そうなの?」
「そーなの!!
そんな事よか泳ごうよ!!」
セカンドは私の質問を終らせて更衣室のドアを開けた。
私がセカンドの後を追ってネルフの屋内プールに来るとセカンドはプールサイドで何かボンベのようなものを持って来た。
何故そんな物がここにあるのか疑問に思ったのでセカンドに尋ねてみた。
「沖縄でスクーバ出来なかったリベンジよ!!」
「…今日、一緒に来る時にあなたはそんな物を持って来てなかったわ。」
私がそう言うとセカンドはにやりと笑って両手を腰に当てて言った。
「ミサトに持ってこさせたわ!!
私らチルドレンだけ修学旅行取り止めとその連絡遅れの代償よ!!」
なるほど。私は納得した。
セカンドはボンベのような物を背中に背負うとプールサイドに腰を掛けてから言った。
「見てて!!ファースト!!
―バックスクロールエントリー!!」
ザボン!
セカンドは後ろ向きにプールの中に飛び込んだ。
と、突然その瞬間にサイレンの音が屋内プール…いえ、多分ネルフ施設内部に響いた。
「…使徒?」
しばらくして、セカンドはプールから顔を出して回りをきょろきょろして口からマスクを取り除いてから言った。
「…なに?! 使徒?!」
私達は急いで更衣室に入って行って着替えて作戦室の方へ向かった。
「アスカ、レイ、遅かったわね。」
葛城一尉が厳しい口調で言った。
「…まだネルフ施設に居ただけ早いじゃん!!」
セカンドが抗議の声をあげた。
それを聞いた葛城一尉は、厳しい口調で再び言った。
「シンジ君はあなた達よりも先に来たわ。」
これを聞いたセカンドは顔をしかめてから言った。
「ミサトのシンジびいきは聞きたくないわ!!
それよりも作戦は? 使徒は??」
葛城一尉はセカンドのこの言葉に何か言いたげな表情をしたけど顔を引き締めると今回の作戦事項を伝達し始めた。
「今回は使徒殲滅ではなく、使徒捕獲の捕獲を行ないます。」
「浅間山の火口内で羽化前の、言わばさなぎの状態の使徒が発見されたの。
今回はその使徒の幼体を捕獲してサンプルとして回収するのが今回の作戦。」
一緒に居た赤木博士が言った。
「ちょっとまってよ!!
それって、私らがエヴァでマグマの中に飛び込めっていうの??」
セカンドがそう言うと葛城一尉がその問いに答えるように言った。
「ぶっちゃけ、そういう事になるわね。
エヴァに局地戦用のD型装備をさせ、火口内に進行。そして使徒捕獲と回収。
…これが今回の作戦になるわ。」
私は考えた。
…多分、使徒の回収は出来ない。
使徒は私達が近づけば動き出す。そして第3新東京市の"この場所"を目指して侵攻するはずだと。
根拠は無い。けど感じる。
だけどわざわざ火口内にエヴァで行くのはとても危険…。通常戦闘よりもリスクが伴うはず。最悪、作戦遂行するパイロットが死亡しかねない…。
私は碇君とセカンドの顔を見た。
…私が死んでもあの水槽の中に私の代わり達がいる。でも彼らは死んだらそこで…。
「…私が行きます。」
私はそう言った。
するとセカンドが私の方を見て眉をひそめて言った。
「…なんでアンタが行くのよ!?」
「…この作戦は危険だわ。
……私が行った方がいいわ。」
セカンドは不満げな顔をして言った。
「だからなんでアンタが行った方がいいのよ?
アンタが行くなら私が行くわよ!!」
「…いえ、
私は死んでも構わないけどあなたや碇君は死んではいけないわ…。」
碇君とセカンドはこの言葉を聞いて驚いたような顔をした。
そして赤木博士が睨むよな目をして、
「…レイ!」
と、私の言葉を制止するかのように言った。
…そう、私の代わりがいることは秘密事項なのね…。
そんな私に碇君は険しい顔をして言った。
「ちょっと待ってよ!
…なんで綾波は死んでも構わないんだよ!?
そんな事言うんなら僕が初号機で…」
「…待ちなさいよ!!
シンジもファーストも行かせないわ。
この作戦は私が行くわ!!」
セカンドが慄然とした態度と口調で言った。
それを聞いた葛城一尉はセカンドを一瞥してから言った。
「今回の作戦は弐号機に担当してもらいます。
…どのみち、D型装備はプロダクションモデルのエヴァにしか付けられないわ。
テストタイプの初号機とプロトタイプの零号機は規格外よ。」
「じゃあ私で決まりね!」
…そう、零号機では出られないのね。
でも、私が弐号機で出れば…。
「…私が弐号機で行きます。」
私はそう言った。
するとセカンドが私を睨むようにしてから私に指を指して言った。
「ダメよ!!
私は弐号機の専属パイロットなの!!
悪いけど、アンタには乗せさせないわ!!」
セカンドはそう言って葛城一尉に厳しい目つきをして言った。
「いいわよね? ミサト?」
「…わかったわ。」
葛城一尉はそう答えた。
作戦は決まった。
でも私は何かが起きるのではないかと、とても嫌な気持ち…そう、不安、私は不安で仕方なかった。