くるくると変わって行く…世界。
知らなかったモノ、知らなかったコト、知らなかった言葉。
それらが何もなかったはずの私の中に入ってゆく。
私をかたち作ってゆく。
ヒトとふれあう。
私の知らなかった心をかたち作ってゆく。
私の心になかったはずの喜び、痛み、涙。
それらを私の心に作ってゆく。
世界は変わる。
…そして私も変わってゆく。
セカンドが私の部屋を訪れた日から数日たった学校のない日…そう、休日。
朝の9時、私はセカンドと共に第3新東京市の繁華街に来ていた。
あの日、私はセカンドと次の学校の休みの日に共に買い物をする約束をした。
私の身の回りの物やセカンド自身の物を買うらしい。
私は今の生活で特に困った事はなく十分だったけど、セカンドはそれでは駄目だと言った。
「からっぽの実験動物・囚人ヨロシクな生活なんてやめなさいよ!!」
これがセカンドの言葉だった。
…回りから聞こえる街の喧騒…、
私にとってはただ通り過ぎる音。気にする事もないものだったのに今日のその音は別の音色に聞こえた。
ヒトが生きている証。
何故だか分からないけどその日はそう思えた。
「さぁ、ファースト! 今日は何から買おうかしら?」
「…何でもいい」
私がそう答えると、セカンドは「じゃ、私が買うものチョイスしていいのね?」と、言った。
…別に何を買うのか私には思い浮かびもしなかったのでそれで了承した。
しかし、その後にセカンドは私の姿をしげしげと眺めて首を傾げた。
…私にどこかおかしな所があるのだろうか?
「…ってゆーか、アンタ、休みの日も制服?
…ま、そーいえばアンタってば服持ってなかったわね。」
そしてセカンドは一瞬考えるような顔をしてから言った。
「そうね、まず服ね、服!!
…アンタ、ネルフから支給されてるお金ってあるわよね?」
セカンドが尋ねてきたので私はとりあえず答えた。
「…月八万円。生活費。」
「へぇ? 私よか多いじゃん。
ま、アンタの場合は一人暮らしだから多めに支給してんでしょうね。」
「…でも、こんな金額、一か月で私、使わない。」
そう私が言ったらセカンドはあきれたような顔をして言った。
「…ま、そりゃアンタの部屋見りゃわかるわ。」
私とセカンドはデパートの婦人服売り場に来た。
回りには色とりどりの服が並んでいる。
と、突然セカンドは婦人服売り場のとある一角に向かって私を引っ張って猛然と歩き始めた。
「ファースト!!今度沖縄に修学旅行よ! まず、服買う前に水着よ! 水着!!
アンタの事だからどーせ、スクール水着しか持ってないでしょ!!」
「…私達、行けないわ。」
「はぁ?」
早歩きしていたセカンドが突然止まって私の方を見た。
「…行けないってどういう事よ?」
セカンドが見るからに懐疑的な表情の顔をした。
…もしかして、セカンドは知らなかったのだろうか?
「…私達、エヴァパイロットは使徒襲来に備えて待機任務。」
「知らないわよ!!そんなの!!」
セカンドは眉間を吊り上げ、不愉快をあらわにした表情をした。
「…私は元々そういう学校行事に行けないと言われてたわ。
…多分、今日あなたが葛城一尉に会えばその旨を通達されると思う…。」
いずれすぐ分かる事なので私はセカンドに言った。
それを聞いたセカンドは顔をますます険しくし、かなりの不愉快を表すようになった。
「何それ!?むかつく~!!!
私達が命がけで戦ってるってぇのにココに閉じ込められるってワケ?!」
「…チルドレンだから仕方ないわ…」
私がそう言うとセカンドは少し驚いたような顔をして私を見た。
…何故?私はあなたが驚くような事を言ったの?
セカンドは視線を横にして複雑そうな顔をして言った。
「…そうね、チルドレンだから仕方ないわね。」
結局、私とセカンドは水着を購入した。
理由はセカンドが言うには「ネルフの施設の中にプールがあるじゃん!!」らしい。
その後に靴や服を購入し、そしてその後に日用雑貨や工具などが売っている店に行って壁紙や絨毯、シーツ、カーテンや台所用品、食器、その他諸々を購入した。
それらは二人では持って行けない大きさや量だったのでセカンドが今日中に配達するようにと店員に言った。
そして最後に鍵の修理工に今日中の私の部屋の鍵の修理依頼を出した。
…そして帰ろうと駅へ向かう頃には昼も過ぎて、駅の時計の針がもうすぐ午後2時半を指そうとしていた。
「ファースト! 今日中に掃除とリフォーム完了させるのよ!!」
セカンドはそう宣言した。
「…あれだけの量の荷物の整理はすぐには終らないと思う…」
私は率直な意見を述べた。
するとセカンドは口の端をゆがめる笑い…碇司令のよくする笑いをしてからこう言った。
「大丈夫よ!!今日の為に人雇ってるから!!」
そう、人材を雇っているのね。
私はセカンドの言葉に納得した。
私とセカンドが私の部屋に戻ってみると既に鍵の修理が終わっていて部屋には鍵がかかっていた。
セカンドは事前に鍵の修理工に貰った鍵を私に二つくれた。
「ファースト、一つはメインね。もう一つはスペア。」
…私はその鍵をもらってしばらく考えた。
「…これ。」
私はセカンドにスペアの方の鍵を渡した。
「は? 何コレ? 私にスペアのキー渡したって仕方ないわよ?」
「いいの。 二つも鍵は要らない気がするから。」
セカンドはあきれたような、よく分からない、というような表情をした。
…セカンドに鍵を渡した事に特に意味はなかったけど…。
ただ、なんとなくこれで私とセカンドとの間に絆が出来るような気がした。
そしてセカンドは小さな声で言った。
「…フツー、女の部屋の鍵なんか男に渡すもんよ…。
…まぁいいわ。わかった。私が預かっとくわ。」
「おーい、綾波~!!惣流~!!!」
「アスカ!!」
…突然、男女混合の声がした。
「あ、ヒカリ!!
…それと…やぁ~っと来たわね、眼鏡オタク!!」
セカンドがいつもの口調で言った。
男の子の声がする方を見たら、よく碇君と一緒にいる相田君と、クラスの委員長の洞木さん、他、何人かの知らない男の子達が一緒にそろってやって来た。
「おいおい、それはないだろ?」
相田君はちょっと怒ったような困ったような顔をしてセカンドに言ったけどセカンドは「いいじゃん、本当のコトでしょ?」と、言って軽く受け流した。
「ま、それはいいとして…、
惣流、人数はこんなもんでいいのか?」
「まぁまぁね。」
「…で、約束は果たしてくれるんだろうな?」
…約束?何の?
よく分からないけどセカンドと相田君の間で何かの約束が取り交わされているらしい。
「んー、私の方は問題ないわよ。
っと、ファースト!!」
セカンドが突然私の方に声をかけた。
「何?」
「相田が私達のプラグスーツツーショット写真を取りたいんだって!!
そしたらタダ働きしてくれるらしいからいいわよね?」
…プラグスーツの写真?
そんな物を撮影してどうするのだろう?
私はよく分からなかったけどそうすると部屋の片づけを手伝うらしいので了承しておいた。
しかしこのやり取りを聞いていた洞木さんは一言、「不潔…」と、言っていた。それにセカンドが何か洞木さんにささやいてたようだけど私には聞こえなかった。
「ところでさぁ~、
なんで碇は呼ばないんだ?」
相田君はセカンドにそう尋ねた。
それを聞いたセカンドは顔をしかめて苦々しげに言った。
「アイツ?
…アイツは成績不良でミサトマンション自室でお勉強中。
大体呼んだって非力でなんの役にも立ちゃしないわ。」
「あれ~??
アイツ、家事とか得意じゃないのか?
しょっちゅう家事させられるって愚痴ってたぜ??」
相田君が再度セカンドに尋ねた。
セカンドはやや不機嫌な様子でほんの少し相田君を睨みながら言った。
「あのバカがきたって足でまといなだけよ!!
もういいじゃん、そんなの!!
…よれよか、ファーストの部屋の改装始めるわよ!!」
セカンドは相田君の問いかけを半ば強引に終らせてから私の部屋の改装に取りかかった。
…セカンドと碇君の間に何かあったのだろうか?
私はその時、ほんの少しこの二人の間の事が気になった。
私の部屋はセカンドと相田君、そしてその知人達(私には名前も顔も分からない)と私の手によって奇麗に清掃され、その後にコンクリートの壁にはセカンドが選んだ壁紙が張られた。
壁紙は、白地に小さな青いバラの柄。セカンドが私に似合うと選んだ柄だった。
そして絨毯…白にこれも青いバラの模様のを敷いた。この辺りは相田君とその知人たちがやっていた。
そして寝具や食器、その他小物は私とセカンドと洞木さんでやった。
そして買って来た淡いブルーのシーツを清掃中に洗って私の部屋のベランダに干した。
日は少し傾きかけてたけど、とても暑い日だったので1時間ほどですぐに乾いた。
そしてベッドメイキングをし、ピロケースを新しい物に付け直し、今まで付けていた照明…蛍光灯を少し温暖色の光の傘の付いた照明と取り替えた。
玄関には…これも淡いブルーのマットを敷いた。
全てが終ったという頃にはすっかり日が暮れて暗くなりかけていた。
「ふぃーっ!!
大した重労働だったぜ。ばっちり報酬貰わないとなっ!!」
相田君が敷いたばかりの絨毯に腰を降ろしながら言った。
相田君の知人達も息が上がっているらしく、相田君やセカンドに色々と話しかけていた。
みんな絨毯に腰を降ろして休憩しているようだった。
洞木さんは台所に立ってお茶の用意をしている。
私もみんなに習って座る事にした。
相田君は私の部屋を眺め回し、そして言った。
「しっかし…見違えるようだな!!
惣流に聞くまでピンと来なかったけど、
綾波の部屋を見た時はもうムショかなんかかと思ったぜ。」
「まーね、私も同様の感想持ったわ。」
セカンドは相田君の言葉にそう答えた。
私はこの二人の会話を聞いて自分の部屋を改めて見回してみた。
…たしかに前と全然違う印象…。
違う部屋に来たよう。
「…で、ファースト。
部屋のリフォームした感想は?」
セカンドが私に尋ねて来た。
「…別の部屋に来たみたい…。
…でも、嫌な感じはしない…。」
それを聞いたセカンドは満面の笑みを浮かべて言った。
「でしょ?
嫌な気しないならこっちの方がいいじゃん!!」
セカンドの笑顔とこの言葉を聞いて私は前に感じた感情を思い出した。
…暖かくて、気持ちのいい感情…。
…そう、嬉しい。
これは"嬉しい"ってことだと思う。
「ええ。
…奇麗にしてくれて、ありがとう。」
私はセカンドと洞木さん、相田君、そしてその知人達にお礼を言った。
するとセカンド以外は驚いたような表情をした。
「…?
どうしたの?」
「い…いや…、
綾波がそういうなんて思わなかったから…さ、
アハハハ…」
相田君は少し照れたような少しぎこちないような、そんな笑いをしながら言った。
「…ファーストだってお礼言う事あるわよ。
ま、今日はアンタ達に感謝してるわ。」
セカンドは相田君にそう言った。
私はそれを聞いてセカンドに向かって言った。
「…あなたにも感謝しているわ。
ありがとう、セカンド。」
それを聞いたセカンドは少し顔を赤らめて言った。
「ちょっと!!唐突に改まってお礼なんか言わないでよ!!
……はずかしいじゃないの!!」
…セカンドが今言った言葉の意味はよく分からなかったけど、今日はとても嬉しかった。
…そして真新しくなった部屋を見て私は自分も変わったような気がした。