「……アスカ?」
赤みがかった長い髪の少女はだるそうに顔を上げた。
「…お久しぶりね、バカシンジ。」
たしかにアスカだ。
でもその姿は膝丈のスカートに白いブラウス。僕と一緒にいた頃よりもずっと大人しい服装だった。
…そしてアスカの今の表情はいつかどこかで見たような…何処で?
分からないけど目の座った…無表情? いや、無気力さとだるさと不快さの入り交じった表情だった。
アスカは僕の姿を見ると目を細めて軽蔑と嫌悪の篭った目で僕を見た。
「…こんなところで何してるの?」
他に言葉が思い浮かばなかったからとりあえずそう尋ねてみた。
「…それを私に聞くんだ。」
見るからに不愉快そうだ。
アスカは更に目を細めて僕を見つめている。
昔と変わらない青い目…。
でも、ここまで軽蔑を込められて見られたのはあの時以来…。
…あの時っていつ?何処でだったっけ?
アスカはそんな僕の様子を見て一つため息をついてから言った。
「…暇つぶしよ… たまたまこの近くまで散歩してて疲れたから休んでただけ。」
そう言ってアスカはかったるそうに手に持っていた鞄を僕に押し付けてきた。
「持ってよ。」
「え?」
「重いから持ってよ。」
僕はしぶしぶアスカの鞄を持った。
受け取った鞄を見るとスポーツバッグみたいだった。
その鞄は言うほど重いとは思えなかったけどアスカの態度を見ていたら、やたらと僕の肩にその鞄の手提げ部分が食い込んできた。
「アンタんち何処よ?」
アスカは僕の方を向かずに唐突に僕に聞いてきた。
「え? この坂を登った上の…ワンルームだけど?」
「ふーん、 …じゃあ連れてって」
「…なんで?」
アスカのこの言葉に僕はそのまま思った事を口に出してしまった。
アスカはこの僕の質問に、顔を上げて、人を見下すような目をして薄ら笑いを浮かべながら言った。
「…アンタが今どういう生活しているのか見てみたいのよ。
一瞬でも世界を一つにした神様の行方をね。」
サードインパクトの事でも言ってるんだろうか?
何を言ってるのか分かったような分からなかったような言葉だったけどそのまま僕は聞き流すようなそぶりで言った。
「僕の部屋に行くんだろ? …じゃあ早くしてよ…。」
「…へぇ、それなりにまともな待遇にされてるじゃん。」
アスカは僕の部屋に着くとドカッとカーペットの上に座り込んで言った。
僕は自分のベッドに腰を降ろしながらアスカの方を見て言った。
「そっかな…」
「…少なくとも私よりはね。」
一瞬アスカの言ってる意味がよく分からなかったけど…。
それってアスカは苦労してきたって事?
「その顔はよく分からないってカンジね。…アンタは今、日本政府に養ってもらってるのよ。」
…そっか…。僕は日本政府に養ってもらってるのか…。
今さらながら僕が誰に世話になってるのか分かって「ふーん」という感じだった。
「一応、使徒攻防での功績に対する恩恵。…で、私は国籍がアメリカだったから、
アメリカ軍に連行されて日本政府との間で持て余されて、事実上日本の米軍駐屯地で拘留。」
…アスカが拘留?
「…ドイツに帰ったと思ってた。」
この言葉に対してアスカは冷ややかに言った。
「あそこは母国であって母国でないわ。 私には母国なんて無いも同然。」
そして自嘲的にアスカは天井を見上げて言った。
「…そもそも戦自に多大な被害を及ぼした張本人だったから。」
そう言って改めて僕の方を目を細めて見ながらイヤな笑いをして言った。
「目に見えて悪さした私を捕まえたのよ。
…笑っちゃうわね。世界を破滅させた張本人にはお咎めナシ。」
そう言ってアスカは立ち上がった。
「シャワー浴びたいわ。 バスルーム貸してよ。」
アスカはそう言ってそのまま洗面所の方に行った。
どのくらいの時間がかかったかな?
だいぶ長い間アスカはお風呂の方にいたと思う。
その間、僕は呆然と自分のベッドの上に腰掛けていた。
洗面所のカーテンが開いてアスカがバスタオルを蒔いて出てきた。
「アンタ、上着かなんか貸してよ。」
「…これでもいい?」
僕はカーテンに干してあった僕の白いカッターをハンガーから外してアスカに渡した。
アスカは蒔いたバスタオルの上からそのカッターを羽織った。
「へぇ、大きいわね。これ。」
「そう? 僕にはちょうどいいサイズなんだけど?」
「アンタの方がでかくなったってコトか。」
アスカはそう言って僕の座っている横に腰掛けた。
そして僕の首あたりに首を近付けて臭いを嗅ぐしぐさをした。
「…アンタ、汗臭い。 シャワー浴びなさいよ。」
僕は重い腰を上げてそのへんのチェストから適当に自分の衣服を取って洗面所へ行った。
僕が洗面所から出て来た時、アスカはさっきのお風呂から出て来たままの恰好をしてそのまま無表情にベッドの上に座っていた。
僕は他に座る場所がないな…と、思って絨毯の上に腰を降ろした。
それを見たアスカは目を細めて言った。
「アンタってさ…、自分が誘われてるって思わない?」
「…そうなの?」
僕はとぼけてみせた。
…気がついてはいた。
多分、僕の部屋に連れて行けと言った時点でそうじゃないかって。
「本当、つまんない男ね。」
そうアスカは小さく言って見に付けていた僕のカッターを絨毯の上に脱ぎ捨てて、蒔いていたバスタオルを取った。
胸がはだけて見える。
いつか見た時よりずっと大きくなってる。
アスカは蒔いたバスタオルを自分の足の前に隠すように持ちながら言った。
「…これなら誘ってるって分かるでしょ?」
「…そうだね。」
僕は興味無さげな言い方でアスカに言った。
するとアスカは持っていたバスタオルを取ってベッドの上から絨毯の上に座っている僕に跪くと僕の上着を脱がせ始めた。
あっという間に僕は上半身が裸になった。
そしてアスカは僕のズボンのジッパーを降ろしながら言った。
「…ズボンくらい自分で脱ぎなさいよ…」
僕はゆっくりと立って、言われるままにズボンを脱ぐとそのままベッドに腰掛けた。
「…これでいいの?」
「…下着を身に着けたまま?」
「…ちょっとイヤかな…?」
僕がそう言うとアスカは立ち上がって僕の肩を押さえつけるようにベッドの上に僕ごと倒れ込んだ。
僕はアスカに上からのしかかってこられたような形でベッドに横になった。
「…私がこんな恰好してるのにアンタだけ脱がないっての?」
そう言って僕にのしかかったままズルズルと僕の下の方へ移動して僕の下着を引きずり降ろした。
「…格好悪いわね。」
「別に…」
僕の下の方にいたアスカは僕に跨がるように僕の上に乗って来た。
そして自分の顔を僕の顔に近付けて、目を瞑って…。
…キスをした。
これは多分、僕らにとっては二度目のキス。
前の時は遊び半分、今度は…。
アスカは僕の唇に自分の唇を深く押し付けて僕の首に手を回した。
そしてアスカは僕の唇から自分の唇を離してささやいた。
「…後はアンタがしなさいよ…。」
そう言ってアスカは僕の真横に身を横たえた。
僕は仕方なしにアスカの上にのしかかった。
そしてアスカに軽く口づけをしてから呟いた。
「…何すればいいかよく分からないよ…」
アスカは僕の下から目を細めて睨むように僕を見ながら言った。
「…抱けばいいじゃない…。」
その言葉を聞いた僕はアスカの首筋に吸い付くように口付けた。
僕はそのままアスカの首筋から胸元まで唇を押し付けて滑り降りて行った。
…さっきまでアスカは蔑むような目で僕を見ていた。今のアスは…どんな表情をしているんだろう?胸元に口付けている僕はアスカの表情が分からない。
そのまま僕はアスカの裸体のあちらこちらに口付けて"愛撫"していった。
アスカが時々喘ぐような声をあげた。
…いつかを思い出す。
あれは…夢だったのかな?
加持さんとミサトさんがしていたような…。
僕もアスカに同じようにしている?
しばらくしてからアスカが囁くような気怠そうな、そんな声を出して言った。
「…そろそろしたら?」
僕はのろのろと上体を上げて言われるままにアスカの中に入ろうとゆっくりとアスカの所に合わせた。
「…バカ!! そこじゃない!!」
アスカが僕を叱咤する声をあげた。
僕は色々と位置を変えてみたけどアスカに「痛い!!」とか、「バカ!!」とか言われてまともに出来なかった。
業を煮やしたアスカは僕の下から急に横にずれてそのまま僕の上にのしかかるように馬乗りに跨がってきた。
そしてそのまま僕のを掴むと天を仰いでそのまま一息つくと一気に僕を自分の中に招き入れた。
アスカの中はぬるりとして生暖かい感触がした。
アスカはその瞬間に痛みに呻くように下を向いて僕の胸に爪を立てた。
「っつ??!!! い…痛い…じゃな…い…!!」
アスカがさらに僕の胸に爪を食い込ませた。
アスカが爪を食い込ませた所がら血が滲んできた。
僕はさすがに少し痛くなってきて、アスカに言った。
「…ちょっと痛い…。 手、離して…。」
アスカはこれを聞くと下に俯いたままさらに僕の胸に爪を食い込ませて呻いた。
「…ア…アンタなんかより、私の方が…痛い…わよ!!!!」
「…じゃあ、やめる?」
僕は一応提案した。
するとアスカは急に顔を上げて憎々しげに僕に言い放った。
「???!!! だぁ?もぉ?!!!
アンタ見てるとイライラすんのよっ!!!!」
アスカの美しい顔は苛立たしさで醜く歪んだ。
…自分から誘っておいて何がそんなにイライラするんだろう?
…それとも僕が…。
僕はアスカに気怠く答えた。
「自分みたいで?」
アスカは僕のこの言葉を聞くと、突然うつぶせになるように自分の顔を僕の顔に近づけて僕の唇に口付けを…
…いや、僕の唇に噛み付いた。
…鈍い痛みと共に僕は口の中に鉄みたいな血の味を感じた。