何も期待なんてしてなかった。
誰かから手を差し伸べられる事はなかった。
たとえあっても、私は拒否してきた。

だって、その手は私の為のものじゃない。
手を差し伸べたその人自身の為のモノ。
手を差し伸べた自分を褒める。
結局、私の為じゃない。

そんな手は要らない。
何でも自分でしてきたし、これからだってそうする。

だけど、差し出された手が嬉しいのは、何故?

…もしかしたら、私の為のものじゃないかもしれないのに。

2nd.Story

Das ein- und ausgeschaltete Mädchen - 接続された少女 -

Episode 6

浅間山。この名前、学校の公民…政治、経済学の中学生版みたいなのの教科書に載っていたのを思い出した。たしか、浅間山荘事件というヤツ。メディアやマスコミ報道、政治思想に関係した事件だと思ったけど、ここに来て日も浅いし、日本のかなり過去の出来事にはそんなに興味が無かった為か、ただ漠然とした内容でしか覚えていない。
ただ、今から行く浅間山の"温泉"とは全然関係ないみたい。
大体地理の教科書を見ると「浅間山」って地名がいくつもあるのよね。ただでさえ覚えている漢字のレパートリーが少ないのに、同じような名前がいくつもあるとよく分からなくなる。こういうのを"紛らわしい"っていうのよね。

浅間山火口内の使徒を処理した私たちはかくゆう、浅間温泉に来ている。
ミサトがチョイスした場所は浅間山の近くのひどく古びた温泉旅館だった。ただ、使徒迎撃用都市である第3新東京市じゃ見られないような"日本の家屋"という感じはする。私のイメージしていた日本そのものという感じかな?ミサトは使徒殲滅後の事後処理をそれなりに行ってから、この温泉旅館を福利厚生と職員慰安という名目でネルフ貸し切りにして一泊二日という宿泊を決めた。
向こうにも温泉が一杯あったけど、入れるチャンスなんて無かったから、来れて嬉しかった。でも、経費落としかぁ…。私は、温泉はミサトのオゴリだって言ったのに…。
そう思いながらも今回宿泊するメンバーをチェックする。
今回宿泊するメンバーは私、シンジ、ファースト、ミサト、そして医療スタッフ。
マヤさんや日向さん、それにリツコさんとかのネルフスタッフはそのまま本部に戻って事後処理にあたっているのに、仕事が山ほどあるはずの現場の総責任者であるミサトが来たのは腑に落ちない。その辺りを聞いてみたら、回答は「先発よ。他のメンバーは後で行くことになっているから。それに、全員来させるとネルフが回らないのよ」と言って話を流した。
アンタが責任者なんだからアンタがしんがり勤めりゃ良かったのよ、って言いかけたけど、まぁ、この人はこういう人だと思ってやめた。
そして、医療スタッフが同行しているのは溶岩内に通常装備で飛び込んだシンジとファーストの為だ。
私と弐号機は局地戦用の装備をしていたから熱中症になりそう"だった"で済んだけど、シンジとファーストは完全な熱中症だ。L.C.Lが溶岩の熱に暖められて中でのびきったらしい。通常兵器じゃ歯が立たないほどの無敵の防御を誇る決戦兵器でも、さすがに溶岩の熱とまでなると苦しいわね。局地戦用のD型装備をしていた弐号機の中でさえ、かなり熱かった。でも、エヴァの機体そのものは装甲が融解しただけで済んだようだった。
ただ、あの装甲も修理するだけで億単位、兆単位でお金が飛ぶらしいから全く損害無しとは言い難いけど。
二人とも本当バカなんだから…。そう思いつつも、私はシンジとファースト、それぞれの部屋へ顔を出しに行った。

「ヘロゥ!シンジ!調子はいかが?」

純和室にベッドというなんとも違和感のある部屋。
私はその上で点滴を受けているシンジに声をかけた。
シンジは寝ながら私の方に顔を向け、少し微笑む。

「ああ、アスカ。うん、ちょっとだるいって感じかな?」

「まぁ、すっぽんぽんでマグマにダイブだもんね~。よく途中で失神しなかったわね?」

「うん、まぁ、一応は。
リツコさんには外に出るまでに数分遅れていたら死んでいたのよ、って怒られたけど。」

「でも、そんなけのびていたら温泉には入れないわね~」

「いや…入りたいよ。だってマグマの中に居た時さ、夢中だったし。
それに、長い間入ってなかったから熱いとか、そんなこと全然思いもしなかったし…。」

シンジはそう言いながら笑う。
旅館の窓からは夕日が差して、シンジの笑顔を赤く照らしている。
今日の昼まで限界ぎりぎりの状況で使徒と戦っていたっていうのが嘘みたいな穏やかな景色。いつも使徒との戦いが終った後は普段の日常がかえって非日常と感じることはあるけど、この景色の為か今日はそれを強く感じる。
夕日に照らされたシンジの顔を何気なく見ていたら、ふと思った。
…コイツ、なんでマグマの中なんかに飛び込んできたのだろう?
いくらエヴァにA.T.フィールドがあるからって限界ってモノがあるじゃない?

…どうしてなのかしら?

「アンタってさ…」
「…え?」

「…何でもない。」

私は咄嗟に言いかけた言葉を飲み込んだ。
なんか、言えない。それを言ったら何かを壊しそうな気がしたから、やめた。

私はシンジの部屋を出てからファーストにも顔を出しておこうと彼女の部屋を探す。
途中のロビーでミサトが携帯片手に何か深刻そうに話をしているのを見たけど、私は気にしないでその横を素通りした。
…責任者が仕事を差し置いてこんな所に来るからよ。
そう思いながらミサトに冷めた視線を送ってやった。

ファーストの部屋の前まで来て、私はこれからどんな事を言ってやろうか思案した。
シンジもそうだったけど、ファーストがマグマの中まで助けに来るのは予想外もいいところだった。最近ヒトらしくなってきたとはいえ、さすがに命令に逆らうなんてことまでは出来ないと思っていたから。

私はファーストの泊まっている部屋の前まで来て、引き戸をノックする。

「ファースト!居るんでしょ?」

一応声はかけたけど、返事を待たずに戸を開けた。
中を見ると、ファーストは制服に着替え終ったところだったようだ。
って、何制服に着替えたりしてんのよ?

「…何してんのよ?寝込んでたんじゃないの?」

「…外。散歩してみようかと思って。」

「はぁ?外~??」

私はファーストが何を言っているのか、よく分からなかった。

「窓から見える夕焼け、綺麗だったから。見に行きたくて。」

そう言って部屋の出入り口まで来て靴を下駄箱から取り出す。
夕焼けが綺麗だから出かける?
あんな熱い中に飛び込んで、見事にのびきって熱中症になっていたヤツがする事?
それよりも出歩いたりするのってヤバくない?
感覚のずれた発言に、私は眉を寄せながらせっせと準備をするファーストに声をかける。

「…で、一人で出かけるワケ?」

「ええ。」

「フラついて危ないとか思わなかったワケ?」

私が半ば呆れたようにそう言うと、ファーストは窓の外に顔を向けながら少し沈んだような顔をして言った。

「…私、あの街から離れた事、ないもの。」

そう言われて私は急に目が覚めたように思い出した。
"あの部屋"に住んでいたファーストが出かけた事なんてあるはずない。
私でさえ、ドイツに居た頃はほとんど出かけなかったし、出かける暇なんてなかった。
ケージの中に居る鼠のようなファーストが、何処かに連れてってもらったりすることなんてあるはずない。

「…はぁ。分かったわよ。アンタに付き合うわ。」

「え?」

「アンタに付き合うって言ってんのよ。一人で歩くのは危ないでしょ?」

私はそう言ってファーストに手を差し出した。
ファーストは少し呆けたよな、そんな驚いた顔を見せた。でも私はそんなのをお構いなしにファーストの手を引っ張る。
ファーストは少し迷ったような顔をしたけど、そのまま私の手に引かれるままに歩き出した。

ファーストと私は、温泉旅館の前にある川の横の道を遡るように歩いて行った。
山は沈みかけた赤い夕焼けを背に、黒々として見える。
周りには間を置いて温泉宿がぽつりぽつりと建っていて、その窓は日の光を反射して赤く輝く。この赤い景色は、私を妙な気分にさせた。
建物や山の形や道の形、標識、あらゆるものがドイツと違う。なんだかノスタルジーという言葉は、こういった風景の事を言うのじゃないのかな?と思った。
川面が日の光を受けて輝いて見える。
ここの観光地案内とかよく見ないで適当に道なりに歩いていただけだったけど、なんだか特をしたような、そんな不思議な気持ちにさせてくれる。

「…川、赤く輝いていて綺麗。」

私の横を黙って歩いていたファーストが、唐突に話しかけてきた。
ファーストがこういった感慨深げな事を言うのは…前ほどでもないけどやっぱり珍しい。少し私は驚いたけど、そのままどうってことないような顔をして言った。

「…ん?そうね。綺麗ね。」

「…赤い光の帯が揺れ動いている、まるで花弁みたい。」

花弁か…。
私はファーストの言葉と、輝く川面を見てふと思った。
私のパーソナルカラーは常に赤だった。
髪の色が赤みを帯びているというのもあったけど、エヴァ弐号機のカラーリングが赤だったというのもある。小さい頃から赤い色に慣れ親しんできた私にはこの色は私そのものになっていた。私は事あるごとに色々なものに赤い色を選んで使っていた。
そんなことを考えていたら、急にドイツに居た頃のことを思い出した。

「赤と花弁、といえばやっぱりアレよね。」

「…何?」

「バラよ、バラ。赤いバラよ!!」

「赤いバラ?」

「そ、赤いバラの花!
赤いバラっていうのは"情熱"と"熱愛"を意味する赤なのよ!」

ネルフのドイツ支部に居た頃、施設内で色々な花々を育てている温室を見つけた。
あれは実験用の花を栽培していた場所だったけど、その中で私は白いバラと赤いバラの花を見つけた。私は赤いバラの方にすっかり魅入ってしまった。自分のパーソナルカラーなだけに気になったし、何よりもそのバラの花弁が幾重も折り重なって凄く華麗で情熱的だなと思ったから。しばらくしてから熱心にバラを見ている私に、温室で花の世話をしていた人が赤いバラの花言葉を教えてくれた。

「私はいつか他の誰かからそれをプレゼントされたいわねぇ…。」

「何故?」

「決まってんじゃない!永遠の愛を誓ってもらう為よ!」

…半ばジョークで言ってはみたものの、赤いバラの花束をプレゼントなんて臭い話だと思うし、それをやる"男"が居たら気が知れないな…とも思う。
でも、やっぱり時々誰かからプレゼントされたいって思う事はある。
まぁ、愛を誓う男なんて居る訳ないけど。
親愛であろうと、恋愛感情的なものであろうと、愛なんて誓うヤツが居る事自体に私は実感が持てない。よく親子の愛とかなんとか、ってあるけど、言うほど世の中に愛が転がっているとは思えない。
…少なくともシンジのお父さんや自分の両親を見る限り、親の愛はあまり実感が持てない。
それに、男女の愛なんて即、性愛って感じでその次に連想するのは寂しい大人の慰めあい。
結局、私が連想するような"愛"というのはこの世界に存在すらしないんじゃないかと思う。

ファーストは私の発言を聞いて、目をパチクリさせた。
そしていたって真剣な様子で私に聞いてきた。

「…あなたは赤いバラの花束をプレゼントされたいの?」

念を押すような質問。改めて聞かれても、困る。非常に困る。
さっきのは半分冗談だったし、時々そう思ってはいてもやっぱり私は臭い話とかは照れくさいし、苦手だ。

「う…うーん。そう、真剣に突っ込まれて聞かれても…ねぇ?
まあ、そのくらい真剣なヤツがいたら貰ってやってもいいってところかしらね?」

一応、はぐらかしたつもりだった。
でも、ファーストは難しい顔をしてしばらく考え込んでいた。
…なんか、そんな顔されるともっと困るんだけど…ねぇ?
何だか気まずくなってきたから、とりあえずは話題の矛先を変えようと私はファーストに話しかけた。

「じゃあ、アンタの方はそういうの、欲しいと思わないワケ?」

「…私は…分からない。」

私にはこの返答に対する言葉が思い浮かばず、ファーストはそれ以上は何かを言おうとはしなかった。

二人で黙って川岸の道を歩いていたけど、何気なく私はファーストの方を見た。
白い肌。私はよく白いって言われるけどファーストの方はもっと白い。今は夕日に照らされて少し赤く染まっている。
そして色が抜けたような髪。時々蒼く見える。
この姿を見て、赤いバラと一緒に育てられていた白いバラを思い出した。
そのバラは赤いバラに紛れて咲いていた棘の無い一重のバラだった。私に花言葉を教えてくれた人は赤いバラと一緒にその白いバラの事も教えてくれた。
たしか、その意味は…。

「無邪気、清純、誠意と友情…」

「…どうしたの?」

「…あ、何でもない!何でもない!」

ファーストが話しかけてきて私は慌てて口をつぐんだ。
…恥ずかしい事を思い出した…。
たしか、棘の無いバラで"誠意と友情"。赤いバラに白いバラで"和合"を意味している。
これだけでかなり恥ずかしい意味だ。この間までファーストの事を徹底して邪険にしていたせいもあるけど、教えるには気恥ずかしい。何より私たちの間じゃ、あんまり似合わないかも。
まぁ、遠まわしに色々な意味を含めて白いバラを送ってあげてもいいかも…とはちょっと思ったけど。

「…まぁ、アンタには…」

「…ファースト・チルドレン、綾波レイだな。」

私がファーストに話しかけた途端に突然、太い男の人の声が聞こえた。
私とファーストは驚いてその声の聞こえる方を見た。
私たちの前に黒い服を来た男たちが数人並んでいた。いつのまに…?
それよりこいつら…。

「ネルフ諜報保安部だ。
ファースト・チルドレン、ネルフ本部からの即時帰還命令だ。同行してもらう。」

諜報保安部!?こいつらが何でこんな所に?

「いいかね?」

「…はい。」

ファーストは大人しく返事をする。
保安部のやつらはファーストを取り囲むようにして一緒に歩き出す。
私は居ても立ってもいられず、思わず声をだした。

「…ちょっと待って下さい!なんでファーストが…。」

「セカンド・チルドレン。君には関係無い。」

諜報部の人が振り向きもしないで私に冷たく言い放つ。
ファーストは促されるままに黙って黒服の男たちと共に去ってゆく。
残された私はただ呆然として、その場に突っ立っているしかなかった。

一人で旅館に戻った後、ロビーでミサトが同行していたネルフ職員と慌しく話しているのを見た。「…レイは、何処にも居ないの?」ふと、そんな声が聞こえてきた。
ミサトはまだ知らないのか…。
私はそう思いながらミサトの側まで来て、さり気なく言った。

「…ファーストなら黒服が連れて行ったわよ。」

慌しくしていたミサトが驚いた顔をして私の方を見た。

「…諜報保安部の奴らが連れて行ったの?」

「そうよ。有無を言わせずにね。」

「…ちっ。先を越されたか…。相変わらず強引でデリカシーの無い奴らね。」

ミサトはツメを噛みながら舌打ちする。 私は訝しげにミサトを見た。

「…何があったのよ?」

私はミサトに険しい目を向けながら尋ねる。
そんな私にミサトが真剣な面持ちで言う。

「…レイを即、本部に帰還させろ。そう、本部から連絡が入ったわ。」

「…何で?」

「多分、今回の作戦の命令違反に関してだと思うわ。指示は碇司令から直々だったから。」

ミサトが淡々と答える。
…なるほど、あの碇司令の命令か…。

「…レイも戦闘で大分疲れているようだったし、熱中症にやられていたからね…。
夜になってから本部へ送り届けると連絡を入れたんだけど。
まさか保安諜報部を使ってくるなんてね…。」

ミサトが独り言のように呟く。
…やっぱりアレ、まずかったんだ。

「…あの、どうしたんですか?」

後ろの方から間の抜けた声が聞こえてきた。
振り向くとシンジが呆けた顔をしてこちらを見ている。調子を外したその声で緊張した会話に水を注されたような気がして、私は少し苛ついた。

「…何よ、アンタ。寝てたんじゃないの?」

「綾波に顔を出そうかと思ったら居ないんだよ。」

…コイツ、バッカじゃないの?何でこんなに最悪なタイミングにそんな事言うのよ?!
何にも知らないとはいえ、シンジの場の空気を外す発言に苛々しながらもなるべく冷静さを失わないようにしながら冷たく言ってやった。

「…ファーストなら先に帰ったわよ。」

「え…?どうして?!
綾波だって、マグマの熱でやられていたじゃないか?!」

ああああ、もう!苛つくわね!いちいち説明してやるのもめんどくさいっていうのにっ!
今更ながら驚くシンジに私は相当苛々が募ってきた。私は半ば言い捨てるようにシンジに向かって叫んだ。

「だーかーら!本部に帰れって命令が来たのよっ!」

「え?どうして!?何でだよ!?」

「ああああ、もう!!だからねぇ~!!」

「…碇司令からの直接命令。
今回の作戦でレイが命令違反をした事について追求するんじゃないかしら?」

ミサトが私たちのやり取りに呆れたのか、そう口を挟んできた。
それを聞いたシンジが目を見開き、驚きの声を上げる。

「どうして?!使徒は倒したじゃないですか!なんで綾波だけ責められるんですか!?」

「あーもう!!アンタってつくづくウルトラバカね!!
ファーストは最初っから碇司令の命令を受けて作戦に参加したんじゃないのっ!!
なんか特別な命令でも受けていたんでしょ!!なのに私を助けに来たからっ!!」

私がそう怒鳴りつけてやったら、急にシンジは黙りこくった。
…はぁ。やっと分かったか。コイツの鈍さと空気の読めなささは本当に疲れる。
ミサトがじっと私たちのやり取りを見ていたけど、途中から呆れ顔になって、そのまま処置無しと言わんばかりにその場を後にした。シンジの方はしばらく考え込んでいたけど、何を考えていたのか唐突に一言呟いた。

「…綾波、飛び込まなきゃ良かったのに…。」

…何?今コイツ、なんて言ったのよ?
よくわからないけど、私は少し衝撃を受けた。
どうしてよ?

「…何でよ?」

「だって、綾波が飛び込まなきゃ命令違反にならなかっただろ?
それに溶岩の熱にだってやられることもなかったじゃないか!」

シンジがそう、熱心に叫ぶ。
その叫びに、私は何か、やりきれないような思いが過ぎる。

「……アンタだって飛び込んだじゃない。」

「あれは綾波が飛び込んだから…」

パシン!

私はシンジが言い終える前にその頬を引っぱたいた。
引っぱたかれたシンジは呆然として私の方を見る。私は身を翻してシンジに背を向ける。

「え、何…?」

「…帰るわ。」

「え?」

「私も帰るって言ってんのよ!」

「な、何で…?」

「ファーストが帰ったからよ!もうここには用は無いわ!
それからっ!今日の借りは10倍にして返してあげるから、ありがたく思いなさいよっ!!」

私はシンジの間の抜けた問いに、大声を出して叫んだ。
無性に空しくなってきた。
コイツはこういうヤツなんだ。
本気で他の人の為に何かをするのを期待しちゃ駄目なんだ。
そう、自分に言い聞かせながら、私はその場を逃げ出すように後にした。

Episode 6 END

ふっ…。全てシナリオ(予定)通りだ…。
…じゃない。すいません。ちょっとイヤな展開にしてしまった。
いや、最初からこの予定だったんですけど…。
っていうかこの話のシンジ、全然駄目ですね。
初出: 2005/08/24
Author: AzusaYumi