閉塞された世界。
変わらない私のセカイ。
どれだけの尽力を払おうと、結果が見えない。
全てが暗闇に覆われた世界。
知らない事実、知らない世界、分からない人の心。
それらが私の中をかき乱す。
ヒトとふれあう。
私が押し殺している感情…忘れていた記憶を呼び覚ます。
私の忘れたはずの悲しみ、痛み、涙。
それらが私の心をかき乱す。
私の世界は閉塞されている。
…それでも私は走り続ける。
私がファーストの家を興味本位で訪れてから数日…今日はあのウザい学校がない日。
朝、随分早くから私はあのからっぽのファーストの部屋をどうしてやろうか思案していた。
ファーストの部屋…ネルフにとって私達チルドレンがどういうモノなのかの一端を見たような気がした。
…ファースト自身は気に掛けてなかったようだけど…、私の方が気になった。あのおかしな部屋。不必要なものを一切排除された部屋。私が暮らすならとても耐えられるような状況じゃない。なのにファーストは気にしない。気にしない事自体がおかしいと思うのだけど。
そんな事を考えていたらキッチンから音が聞こえた。
…シンジが朝ご飯を作っている音だ。
休日の日は…シンジは大体が遅くまで寝ている。
でも前日にミサトが夜勤で朝帰ってくるという電話を受けているからその為に早く起きて朝ご飯を作っているんだろう。
殊勝なことで。
ヒトサマへの優しい気遣い結構。その殊勝さは私に対しては発揮されないみたいだけど。
私はシャワーを浴びる為にキッチンへ足を運んだ。
「…あれ?こんな朝早くにどうしたのさ?」
開口一番がそれか。
「出かける為よ。悪い?」
「いや…、別に悪くないけど…珍しいかな…ってさ。」
私が早起きして悪いってか?
…やっぱりコイツはバカで私に対しては殊勝さは発揮されないみたい。
「休日の朝から珍行動で悪かったわね!
そーゆーアンタこそ、休日朝一で朝食の準備なんて珍しいわねぇ~。」
「ミサトさんが夜勤から帰ってくるんだよ?
朝から何もないんじゃ悪いだろ?」
ふん! やっぱりビンゴじゃん!!
私は出来うる限り、人を見下したような笑顔を作って自分でも白々しいく、わざとらしいような言い方で言った。
「あらあら、シンちゃん。優しいわねぇ~。
その優しさの欠片でも私に発揮されたらいいのになぁ~?」
「なんだよ、それってイヤミかよ?」
…そうよ、嫌味よ。わかってるじゃん。
私は洗面所のカーテンに手をかけた。
「…私の分も用意してよ!!」
「…してるよ…」
何よ、その言い方?私はおまけ?
あの女の!?
私は時々ミサトがいやらしい女に見えてた。
表面上は仲良くしてるけど時々いやらしい女の匂い…発情した女のフェロモン? 人間にもそんなのがあるのか知らないけど特に加持さんと一緒に居る時によく感じた。
ああいった時のミサトが一番嫌い。
そして一緒にいる加持さんも。
一度加持さんを"誘った"ことがあったけど子供と言わんばかりに拒絶された。
でも…ミサトと一緒に居る時は雰囲気が違う。ミサトと一緒に何かをぷんぷん臭わせてる…。あの雰囲気…あの臭い…気持ち悪い。
…そして加持さんは私に対してはのらりくらり、完全にお子さま扱い。
バカにされてる?子供だと思って!?
「私、出かける前にシャワー浴びるから」
「…昨日の夜にお風呂入ったのに?」
あーもー!!
コイツって本当に本当にバカだわ!!
「うっさいわね!! デートの前に奇麗にするのは当たり前でしょ!!」
「そう、なら早く入りなよ」
シンジはそっけなくそう言った。
そして私との話のせいで中断した朝ご飯の準備を再開し始めた。
"ファーストとのデート"…いや、ただ一緒に買い物ってだけの話だけど…でも別にシンジは気にするわけでもない。ただ、いつも通りの"我関せず"を通している。
その姿を見て私はイライラしてきた。
そしてシンジに一言大きめの声を出して言った。
「覗かないでよ!」
「…別に見たいって思わないよ。 ……それに興味ないし。」
これを聞いて私は無性に腹が立って来た。
「…やっぱりアンタってバカよ!!」
私はそう怒鳴ってから洗面所のカーテンを力一杯叩き付けるように閉めた。
私はカーテンを後ろに下を向いて唇を噛みしめた。
…腹の底から沸き上がってくるドロドロとした吐き気のするイヤな感情が体の中心で渦を巻く。
「…つまんない男…。それに気持ち悪い…。」
ファーストとの約束の時間は九時、場所は駅前。
私はシャワーを浴びた後、着替えてシンジに何も言わずにミサトのマンションを出て来た。
ファーストは駅前の改札の側の切符売り場の前で無表情に突っ立っていた。
…相変わらず無表情。でも私の一方的な約束にも関わらず律儀にじっと待っている辺りはまぁ、好感が持てるかな?
…あのどっかのバカよりは。
…今日はいい天気。
ファーストの部屋の改造にはうってつけの日だ。
「さぁ、ファースト!
今日は何から買おうかしら?」
まぁ、お約束。一応ファーストに尋ねておく。
「…何でもいい」
ファーストはそっけなくそう言った。
…やっぱりね。ま、いいか。
とりあえず「じゃ、私が買うものチョイスしていいのね?」と、言っておいた。最初からそのつもりだったし。ファーストもそれで了承した。
それにしても…。
私はファーストの今日の恰好を上から下まで眺めた。
…いつもと変わらない第壱中学の制服。
「…ってゆーか、アンタ、休みの日も制服?
…ま、そーいえばアンタってば服持ってなかったわね。」
靴下は黒、靴は白。これもいつも通り。レパートリーの無さにため息をつきたくなる。
しっかし、休日の日までこの恰好で来るのか…。
服持ってないのは分かってるけどなぁ~。こりゃ最初の買い物は決まりだな。
「そうね、まず服ね、服!!」
そういえばファーストは軍資金持ってるのかしら?さすがに全部私のおごりは無理だわ。
「…アンタ、ネルフから支給されてるお金ってあるわよね?」
「…月八万円。生活費。」
簡潔明瞭な返事。シンジもちょっとは見習って欲しい。
しかし…私より多いな…。私なんかミサトから月2万だし。まぁ、パイロットとしての給料はあることはあるけど一定年齢が来るまで口座を凍結…いや、この場合は封印か?だからなぁ。
まぁ、水道光熱費食費は全てミサトマネーだからいいけど。
「へぇ? 私よか多いじゃん。
ま、アンタの場合は一人暮らしだから多めに支給してんでしょうね。」
私がそう言うとファーストは少し下を向いてから一言、ぼそりと言った。
「…でも、こんな金額、一か月で私、使わない。」
…まぁ、たしかに…。
コイツって死なない程度にしか物を買ってなさそうよね…。
それにあの部屋じゃあ…。
「…ま、そりゃアンタの部屋見りゃわかるわ。」
とりあえず私はファーストをデパートのレディースの売り場まで連れて来た。
レディースの売り場は今のシーズンの新作の服が並んでいた。
…というか、この日本で"シーズン"なんかにこだわる必要あるのかしら?
アパレル業界の商戦ってヤツ?
まぁいいや。私はレディースの売り場のとある一角に向かって猛然とファーストを引っ張って行った。
ここ来たついでね。"アレ"を私の分とファーストの分で物色するか…。
「ファースト!今度沖縄に修学旅行よ!!まず、服買う前に水着よ! 水着!!
アンタの事だからどーせ、スクール水着しか持ってないでしょ!!」
ふっ…つかみばっちりね。
…と、思って私が言うとファーストは一言ぼそり、と呟いた。
「…私達、行けないわ。」
「はぁ?」
一瞬、何の事だか分からず歩みを止めてファーストの方を見た。
「…行けないってどういう事よ?」
私はファーストの"私達行けない"が気になった。
…"私達"?
「…私達、エヴァパイロットは使徒襲来に備えて待機任務。」
はぁ?何…それ?
「知らないわよ!!そんなの!!」
聞いてない。ファーストだけに伝えていたワケ???
…んなはずあるわけ…。
私がそう思っていたらファーストが淡々と語り始めた。
「…私は元々そういう学校行事に行けないと言われてたわ。
…多分、今日あなたが葛城一尉に会えばその旨を通達されると思う…。」
…ちっ!!
最初からそういう事になってたワケ?
しかもかなり期間が差しせまっても伝えない…。
あのさかりのついた酒樽女は何してんのよ?!
私は不愉快あらわに自分の眉間がどんどんつり上がって行くのを感じた。
胸がムカムカしてくる…。
他のバカ面のクラスの奴らがのんきにリゾート。私らは第3新東京市で人類のお守ってか?!
「何それ!?むかつく~!!!
私達が命がけで戦ってるってぇのにココに閉じ込められるってワケ?!」
私が憤りをあらわにファーストに食ってかかるように言った。
しかし、ファーストはとても落ちつきを払った様子…いや、もうどうにもならないコトと言わんばかりにぼそっと一言いった。
「…チルドレンだから仕方ないわ…」
…チルドレン。
そう…私らは命がけで戦っているけどそれと同時に…
…急に私の中に実験室のケージの中の白いねずみ達のイメージが湧いて来た。
こいつも…私も、"第3新東京市"というケージに閉じ込められたねずみ…か。
「…そうね、チルドレンだから仕方ないわね。」
修学旅行に行けないという事実を知った私だけど結局水着は購入した。
ファーストが「何故?」と、問いかけてきたけど、あのネルフの施設の中にもプールはあるし、あの中にスクール水着で泳ぐのも(まぁ、私は他に水着は持ってたけど)なんだかなぁ~?と、思ったから。
その後はもう、靴から服、他に台所用品にいたるまで生活必需品のモロモロを大量購入した。最終的には二人では持って行けない量になったので今日の昼までに配送するように店員に依頼した。
後はあのファーストの辛気くさい部屋の壊れている鍵。
商店街の中にある鍵の修理工(日本では鍵屋というらしい)にファーストの部屋のドアのキーを今日中に修理するようにと依頼した。
そして私は事前にファーストの部屋に使う鍵を本キーとスペアキーと二つ、貰い受けた。
…よし。準備完了。
後はファーストの部屋に戻って本格的にファーストの部屋を改装するだけ。
そう、考えながら駅の方へ私達は歩いて行った。そうして駅に着いた頃には時計の針がもうすぐ午後2時半を回ろうとしていた。
「ファースト!! 今日中に掃除とリフォーム完了させるのよ!!」
私はファーストに向かってそう宣言した。
「…あれだけの量の荷物の整理はすぐには終らないと思う…」
ファーストがすかさず突っ込みを入れてきた。
…ふっ、その台詞は予測しえたコトだわ。こういうのを"シナリオ通り"っていうね。
私は碇司令ばりの"ニヤリ"笑いをしてからこう言った。
「大丈夫よ!!今日の為に人雇ってるから!!」
そう、ばっちりと人雇ってるのよ。それも下らないモンで二束三文で働いてくれる奴らがね。
ファーストは私の言葉を聞いたら納得したようだった。
私とファーストがあの閑散としたマンモス団地の部屋に戻ってみると、鍵の修理が終わり、部屋には鍵がかかっていた。
私は事前に鍵屋から貰ったキーをファーストに渡した。
「ファースト、一つはメインね。もう一つはスペア。」
ファーストは受け取ったキーをじっと見つめていた。
しばらくしてファーストはメインの方のキーを左手に握るとスペアの方を私の方に差し出してきた。
「…これ。」
そしてファーストは私の手にスペアのキーを握らせた。
え?
「は? 何コレ? 私にスペアのキー渡したって仕方ないわよ?」
なんだかよく分からない事をするものだから私はファーストに一応の説明をした。
するとファーストは一言ぽつりと言った。
「いいの。 二つも鍵は要らない気がするから。」
はぁ?
何考えてんの?なくした時にコイツどうするつもりなわけよ?
…っていうか、こういうやり取りって男女間でやりそうなコトじゃない。
…その時ふと加持さんとミサトの事を思い出した。
…あの二人もこういう風に一つの部屋の鍵をそれぞれ持ってた頃とかがあったのだろうか?
でもファーストの場合は私に渡してきた。
コイツの事だから何も考えてなさそうな気もしたけど…。
私は小さな声で、まるで独り言のような言い方でファーストに言った。
「…フツー、女の部屋の鍵なんか男に渡すもんよ…。
…………まぁいいわ。わかった。私が預かっとくわ。」
「おーい、綾波~!!惣流~!!!」
「アスカ!!」
と、その時突然聞き慣れた少年と少女の声が聞こえて来た。
ん、あ。来たか…。
「あ、ヒカリ!!
…それと…やぁ~っと来たわね、眼鏡オタク!!」
眼鏡オタク…相田ケンスケ。
…と、その友達ABC。名前なんか知らないけど「人手がいるの。アンタの仲間何人か集めてきてくれない?」と、事前に、"とある条件"を出して今日雇ったヤツ。
その相田の仲間も"とある条件"目当てに来た…と思う。
あとはヒカリ。家事とかが得意そうなのでうってつけ。
「おいおい、それはないだろ?」
眼鏡オタク…いや、相田はそう言うと人さし指で眼鏡を引き上げた。
「いいじゃん、本当のコトでしょ?」
私は軽く受け流した。
相田含めて6人。まぁ、それなりに相田は人付き合いが良さそうだからそれなりに集められるかとはと思ったけど…まぁまぁの人数ね。
…中身が多分重労働だというのを知ってるワリに。
「ま、それはいいとして…、 惣流、人数はこんなもんでいいのか?」
「まぁまぁね。」
「…で、約束は果たしてくれるんだろうな?」
…さっそく交渉と報酬の確認をするか…。なかなか計算高いわね、この眼鏡。
「んー、私の方は問題ないわよ。 っと、ファースト!!」
私はファーストに声をかけた。
まぁ、ファーストなら特にこの条件は気にもしない、と、私は予測してた。
…というよりもかなり確信に近いんだけど。
「何?」
「相田が私達のプラグスーツツーショット写真を取りたいんだって!!
そしたらタダ働きしてくれるらしいからいいわよね?」
これぞ眼鏡への報酬!!
ミリタリーオタク…本人曰く、"マニア"らしいけど、「人類の平和を守る巨大兵器!!そのうら若き乙女のパイロット二人の操縦用のスーツ姿ツーショット!!」というだけで一発オーケー。
…まぁある意味、コイツはシンジよりもバカかも…?
でも、こういう意味でバカならまだマシ、可愛いかもね…イライラしない分。
…で、肝心のファーストの方は気にもしないであっさり了承した。
しかしこのやり取りを聞いていたヒカリは、「不潔…」とか言って不快あらわ。「大丈夫よ、あの部屋みたらその気も失せるし、それに写真なんかたかがしれてるわ」と、一応なだめておいた。
「ところでさぁ~、 なんで碇は呼ばないんだ?」
眼鏡バカは聞きたくない奴の名前を出して尋ねて来た。
「アイツ? …アイツは成績不良でミサトマンション自室でお勉強中。
大体呼んだって非力でなんの役にも立ちゃしないわ。」
…半分ウソだ。
確かにアイツの成績はやや下降傾向。でも今あのバカが何やってるのか知った事じゃない。
私は最初…というか今朝、起きた時点まではシンジも手伝いに来させようと思っていた。
事情を話せば分かってくれそうだし。いや、一番理解出来るだろうと思ったから。
だってアイツも同じ"チルドレン"だから。
でも…。
私は今朝の事を思い出した。
…ミサトの為に朝食を作っているシンジ。私の事は別段気に掛けているわけって感じはなく、おまけか何か…。
…まぁ、あの家に先に居たのはバカシンジの方だけど…。
…そんな事を考えていたら今朝のドロドロとした感情がほんの少し私の体の中心に戻って来たような気がした。
「あれ~? アイツ、家事とか得意じゃないのか?
しょっちゅう家事させられるって愚痴ってたぜ??」
眼鏡バカがしつこく蒸し返して来た。
…いちいちうっとうしい!!あのバカの事は思い出させるな!!
私は目を細めてこれ以上アイツの話題を出すな!!という意味合いを含めて眼鏡バカを見た。
「あのバカがきたって足でまといなだけよ!! もういいじゃん、そんなの!!
…よれよか、ファーストの部屋の改装始めるわよ!!」
私は眼鏡バカが振ったアイツの話題を終らせた。
そしてファーストの部屋の改装をしようと買って来た掃除道具の一つを手に取った。
ファーストの部屋は私と色ボケ(マニアボケ?)した男集と眼鏡、そしてファースト自身の手によって奇麗に掃除された。
さすがにファーストも学校で掃除とかやっているので掃除の仕方が分からないというトンチンカンなコトは言わなかった。(コイツの事だからそれもあり得るとは少し思っていたけど。)
効率性を考えて私はファーストに買って来たシーツやピロケースを洗濯機に放り込んで洗って干すように言った。
まぁ、今日の天気なら夕方までには乾く…と思う。
奇麗に掃除した部屋に…そう、まず壁紙から張る事にした。柄は白地に小さな青いバラ。これは私のチョイス。ファーストに最初選ばせたら真っ白な壁紙を選んだので私が選び直した。もっと派手な柄にしようと思ったけどコイツのイメージにはおおよそ合わなさそうだし、ファーストとくると白と青のイメージだ。多分それはファーストのプラグスーツと今の零号機のカラーリングの影響だと思う。零号機は前はプロトタイプ…試作機としてのカラーリングのオレンジだったらしいけど改修作業をして今は実戦配備でカラーリングをブルーに変更している。
そして絨毯、これも白に青いバラ。
この辺りの張り替えは重労働なので相田とその愉快な仲間達にしてもらうことにした。
というか、その為に呼んだんだけど。
あと、小物や食器や寝具などは私とファーストとヒカリでやった。
…日が傾きかけた頃にシーツやピロケースは乾いたのでベッドメイキング。
ファーストと私と二人でシーツを広げた。
後は辛気くさい照明の交換。あの蛍光灯って青白い色で暗くて病的なイメージがしてたし。今度のは温暖色系の傘のついたヤツ。これで少しはこの部屋の病的イメージから脱せると思った。
そして最後は玄関のマット。
初めてこの部屋に入ろうとした時のあの汚さを思い出してもっと清潔に、でパステルブルー。
なるべく汚れたら洗うようにとファーストに言っておいた。
そして日が暮れて暗くなりはじめた頃にやっとなんとか私が予定していた改装が終った。
眼鏡…相田が絨毯の上に腰を降ろしながら言った。
「ふぃーっ!! 大した重労働だったぜ。ばっちり報酬貰わないとなっ!!」
「ごっくろーさん!!
ま、写真撮影は開いた日に改めてファースト連れて取らせてあげるわ!!」
私は相田にそう言って同様に腰を降ろした。
相田の友人達も腰を降ろし始めた。
ヒカりがファーストの部屋の台所に言って皆の分のお茶と自分で作って来た手作りのお菓子(祝 改装祝いらしい…気が早いわね、ヒカリ。)などを用意していた。
そしてみんながくつろぐ姿を見たファーストが右に習え、とばかりに自分も腰を降ろした。
私はとりあえず相田の友人達に軽くお礼を言いながら回りを見渡した。
…かなり変わったわね。ここ。
「なぁ、惣流? この部屋さー、花とかもあった方がいいんじゃないのか? 」
「あ、私も思ったわ。今度来る時はお花かなにかあればいいわね。」
相田とヒカリが同調するように唐突に言って来た。
花か…花ねぇ…。
そういえば私はファーストの部屋の壁紙や絨毯の柄に青いバラを選んだ。
私はプレゼントしてもらうなら自分は赤いバラが欲しいと思ってる。赤は自分に似合うと思ってたから。でもファーストには白いバラか…青いバラが似合いそう。
青いバラ…品種改良と交配によって作り出す事は不可能とされてきたバラ。
過去に遺伝子操作によって開発に成功したらしいけど…
人工物か…あまりいい印象がしないな。でも不可能を可能にするというのは好きだった。
不可能への可能性…。
そんな事を考えていたら相田が回りを見回して言った。
「しっかし…見違えるようだな! 惣流に聞くまでピンと来なかったけど、
綾波の部屋を見た時はもうムショかなんかかと思ったぜ。」
「まーね、私も同様の感想持ったわ。」
誰が見たってあれはそういう風に見えるわね。
私は相田の言葉に賛同した。
ファーストの部屋を変えてやろうと思ってやったけど、こうして改めて見ると本当に変わった。
私は横に座っているファーストを見た。
心なしか、顔がいつもより清々しいような、穏やかなような気がする…。
「…で、ファースト。 部屋のリフォームした感想は?」
私はファーストに尋ねてみた。
「…別の部屋に来たみたい…。…でも、嫌な感じはしない…。」
ファーストは相変わらずの単調な口調ではあったけど心なしか嬉しそうに答えた。
…ふふっ。やったね!
これこそ待ち望んでいたって言葉だわ!!
私はファーストに言った。
「でしょ? 嫌な気しないならこっちの方がいいじゃん!!」
私がそう言うとファーストは…さっきよりも…確かにさっきよりも穏やかでずっと嬉しそうな顔…そう、"笑顔"。とてもささやかではあるけど笑顔を見せた。
そして、こう答えた。
「ええ。
…奇麗にしてくれて、ありがとう。」
ファーストはこの部屋にいる全員に向かって…だと思う、お礼を言った。
すると回りの連中は驚いたような表情をした。
ファーストはこのリアクションに不思議そうな顔をして言った。
「…? どうしたの?」
「い…いや…、 綾波がそういうなんて思わなかったから…さ。 アハハハ…」
相田が驚き半分、照れ笑い半分な、妙な表情をした。
こいつのリアクションに私は相田に一言言ってやった。
「…ファーストだってお礼言う事あるわよ。 ま、今日はアンタ達に感謝してるわ。」
これを聞いたファーストがさっきよりも顔をほころばせて…そう、これは完全な笑顔だ、そして言った。
「…あなたにも感謝しているわ。 ありがとう、セカンド。」
いきなりの事で私は動揺した。
ファーストが笑顔でお礼?
お礼は前に言われた事あるけど笑顔でっていうのはない。
私は驚いたと同時にかなり照れくさくなった。
「ちょっと!唐突に改まってお礼なんか言わないでよ!……はずかしいじゃないの!!」
…これは私の完全な照れ隠し…。
でも、ファーストはこの私の…お世辞でもいいとは言えない口調に動じることもなくただ、顔をほころばせていた。