上半身裸になったアスカだが、たわわに実った乳房はブラジャーを着けていたときと変わらずに上を向き、両手を合わせなくてもくっきりとした谷間を見せている。
傷などものともせず、いろいろな媒体で活躍するグラビアアイドルに劣ることのないアスカの肢体は、14歳からずっと一人の男のためだけに磨かれてきた。
「この膨らみに触れていい男は、シンジ、アンタだけなのに」
アスカが寂しそうにそっと乳房を手のひらで包んだ。
能力主義で集めたはずのネルフには、不思議なことに美女が多い。
葛城ミサト、赤木リツコ、伊吹マヤと名前を挙げ出すときりがないほどだ。
その中に置いても惣流・アスカ・ラングレーと綾波レイは別格であった。
ワルキューレヴィーナスと称されたアスカとレイには、数え切れないほどの男達が求愛してきた。
特に熱心だったのが、地理的にも近くネルフの存続に影響力を持つ日本の衆議院議員と国連軍のエリート士官であった。
「僕は、君を日本のファーストレディにすることを約束しよう」
「世界のパワーバランスをこの手に握ってみたくはないか」
権力と金をちらつかせて、交際を迫った二人をアスカはあっさりと振った。
「アタシはすでに世界の救世主なのよ。これ以上の権力が有るなら見てみたいものだわね。それにアタシの連れ合いは決まっている。アタシの全てを受けいれてくれる相手はシンジしかいない」
世界中がわいた。戦いの中に芽生えた恋、命を捧げあった仲。神の祝福を受けられぬ愛。
誰もが歓び、そして泣いた。
だが、中には馬鹿もいた。
世界の救世主の美少女は処女でなければならない。どころか、男と口を利いたことさえない聖なる存在でなければならない。
彼らは、アスカを淫乱扱いし、救世主同士、未成年の男女交際は子供たちの性の乱れを助長すると騒ぎたてた。
「馬鹿じゃないの? アタシに子供を作るなっていうつもり? アタシは偶像じゃないわ。生身の女。女が男を求めるのは自然の摂理。第一、男と女が一つならないでどうやって人類の繁栄がもたらされるのか、聞いてみたいものだわ」
アスカの直接的な表現は、モラルや教育を御旗に騒ぐ連中の盾を一槍で貫いた。
「それにね、アタシはまだ新品よ。シンジったらキスしかしないのよ。このアタシがいつでもOKの三連呼だって言っているのに。まったく鈍いにもほどがあるわ」
付け加えたアスカは真っ赤になった。それが真実であることを無言で、そして強力に証明した。
世間は、シンジを糾弾した。それでも、男かと。
「あの頃から、シンジは、セックスに興味無かったわ」
思い出してアスカはため息をついた。
二人がまだ救世主か、人類大量殺人の凶悪犯か、世界が判断に悩んでいる頃、アスカとシンジも互いの関係に苦しんでいた。
アスカはシンジに見下されたと思いこみ、シンジはアスカに嫌われていると信じこんでいた。
二人は警備の都合上から一つの部屋に閉じこめられていたが、その心の距離は、ドイツと日本ほど離れている。
アスカは、シンジを見ず、シンジはアスカに声をかけない。一日の始まりからそうなのだが、24時間それを続けることはできない。
使徒戦役後半、心をこわしたアスカの衰弱は、最終戦で復活したかのように見えたが、一時的なものでしか無く、サードインパクトを終えてみると身の回りのことさえ自分でできなくなっていた。
また、彼らを保護した国連は、一日一度医師を巡回させるだけで、それ以上の人手を出してくれなかった。
アスカは、水を飲むにもシンジの手を借りねばならない状況にあった。
最初シンジにものを頼むなんてと、意地を張っていたアスカだったが、喉の渇き、空腹には耐えられても排泄は我慢できない。
水分の摂取を控えても、点滴で強制的に水分補給をさせられている。
我を張って失禁すれば、ベッドのマットからシーツ下着、病院着まで交換しなければならなくなる。漏らす。14歳の少女にとってそれは死に勝る苦痛であった。
「シンジ、起こしてくれる。トイレに行きたい」
アスカはつとめて冷静な声を出した。
大きな病院の最高級の個室並の設備がある病室には、トイレもある。アスカのベッドから10歩も離れていないが、自分の身体を支えるだけの力を下半身が失っているアスカには、エベレストに登るよりも困難であった。
「わかったよ」
シンジも淡々と応じる。
24時間点滴のポストをアスカが左手で持ち、シンジがアスカをお姫様抱っこする。
「軽い……」
抱えあげた瞬間にシンジが辛そうにつぶやいたのをアスカは耳にしたが、その中にこめられた悔恨の音色までは聞き取れなかった。
トイレに座っても身体が安定しないアスカは、シンジに支えられて排泄行為をするしかなかった。排泄の音を聞かれ、臭いをかがれる。
「こいつは、男じゃない。ただのヘルパーだ」
アスカは、ずっと心の中でシンジのことを意識しないように考えながら、シンジに依存しないと生きてさえいけない身体を呪った。
排泄だけではない、着替えも清拭もすべてシンジの手がないとできなかった。左手だけでは、ショーツを履き替えることも難しい。
アスカは、高圧的にシンジに接することで、思い通りにならない自分の身体へのいらだちを発散させるしかなかった。
「汗かいたわ。キモチワルイから身体を拭きなさい」
「アンタみたいな男と違って、女の子はデリケートなんだから丁寧にしないと後で酷いわよ」
「点滴の血液がついたわ。服を着替えさせて」
「あの時のようにアタシの裸でしたいなら、していいわよ。アタシはどうとも思わないから」
アスカの言葉は確実にシンジを傷つけたが、アスカも同時に痛みを覚えていた。
アスカにはわかっていた。本当の意味であのサードインパクトの悲しさを共感できるのはシンジしか居ないと言うことが。だが、それを認めてしまうことは、できなかった。 アスカにとって、シンジは復讐の対象であり、憎悪の標的でなければならず、アスカはその思いに縋らないと生きていけなかった。
シンジは、そんな罵倒にも、アスカの裸にも動揺することなく、黙々と命じられたことをこなしている。
アスカにはそれも不満だった。
双子使徒イスラフェルでのユニゾン特訓の終わり頃から、アスカはシンジが自分に好意を抱いていることを感じていた。日本人ではあり得ない容貌と肢体に憧れる男達は多い、当初アスカもシンジがその上辺しか見ていない馬鹿だと思っていた。
マグマへシンジがとびこんできたことで、それが間違いだとアスカは気づいた。
憧れている女の子のために飛びこむだけなら、できる男は何人か居るだろう。だが、数百度を超えるマグマのフィードバックに耐えてアスカを引きあげるまでがんばれる男は、そうはいない。シンクロを押さえていたにしても、全身を火であぶられるに等しいのだ。入った途端に逃げだして当然、それを数分に渡って耐え抜き、アスカの手を握り締めて、引きあげるまで気を失わなかった。
庇護の手を振り払い続けてきた少女に無理矢理伸ばされた救い。
アスカはシンジに男を感じた。
それがかえって二人の仲を遠ざけることになってしまった。
アスカは世間一般の13歳とはかけ離れた育ち方をしてきたために、異性にどのように接し、どうやって自分の意志を伝えていくかがわからなかった。
下駄箱には、入りきらないほどのラブレターがあり、毎日のように告白をされていたが、されることになれていても、やったことはなく、好意を示されてもどうやって応えればいいかを知らない。
さらにアスカには、自身の存在意義として譲れない使命があった。エヴァのパイロットとしての活躍こそ、惣流・アスカ・ラングレーが、生きている意味であり、誇るべきプライドだった。
その意味でシンジは同僚であり、ライバルである。恋の対象として心悩ませるとか、保護してくれる腕として頼るなどとんでもなかった。
恋心と敵愾心、せめぎ合う二つの感情は、未熟なアスカの精神を不安定にし、シンジにあたった。
アスカの言葉と態度は、精神の未発達なシンジに恐怖を与え、アスカとの距離を開かせていくことになった。
わずかずつ離れていく二人、それが決定的になったシンクロ率の逆転、シンジの活躍、そして使徒による精神攻撃、動かなくなった弐号機、ファーストチルドレン綾波レイの自爆、アスカの精神は限界を迎え、破綻した。
再びアスカが意志を取り戻したとき、すでに破滅の歯車は止められなくなっていた。
背中を支えてくれる人を自ら拒否したたった一人での戦い。敗北を喫したとき、アスカは二度目の崩壊をした。
死の暗い闇から復帰したとき、アスカはシンジに首を絞められていた。
マグマの中で助けられて以来、求め続けていながら手に入れられなかった男。首を絞めているシンジが幻でないかと確かめるために、アスカは手をのばしてシンジに触れた。
途端に、アスカの首を絞める力がなくなり、シンジの涙がアスカをぬらした。
「キモチワルイ」
アスカは、自分が出せなくなった感情の発露をうらやみ、そして呪った。
この一言が、シンジの感情を殺した。
アスカは、病室で表情を変えることなく、アスカの女に触れるシンジを憎悪した。
「まったく、好きなら好きって態度で見せてみなさいよっていうのよ。シンジはもうアタシでは駄目なんだって、本当に思ったんだから」
あの頃に思いをはせたアスカは、文句を口にした。
「アタシと一緒にいながら、なにも言ってくれないシンジにアタシは絶望した。憎まれてもいい、シンジの中にアタシは居たかった。あのときは本当に辛かったのよ、シンジ」
アスカは、たっぷりとふくらんだ乳房をいとおしげに抱き、シンジの名前を呟いた。
「シンジにとって、女はアタシだけ。アタシにとって男はシンジだけ。それは、過去も未来も全ての時空において決まっているわ。昔のこととはいえ、ほかの女で欲望を発散していたなんて、お仕置きよ、シンジ」
アスカは服を脱ぐために横に置いたシンジの日記を手に持った。
碇シンジの日記
2015年9月20日
ケンスケとトウジと遊びに行く約束をしていたのに、朝いきなりミサトさんから出張を言い渡された。前もってわかっているなら、さっさと教えてほしい。こういう計画性のなさが、ミサトさんの生活態度にも影響を与えているんだろうなあ。
僕が掃除をするリビングやキッチンは、ちゃんとしているけど、ミサトさんの部屋は、ますますひどくなっている。
サードチルドレン観察日記というのがあったり、ミサトさんの紫のブラジャーが転がっていたりで、入る気にもならないけど。
同居したころのようにミサトさんの下着で興奮することもなくなった。
まあ、ノーブラ、タンクトップ、ホットパンツでうろつかれると下着なんかどうでもいいと思う。
包装紙よりも中身が、大切だからね。
それにしてもミサトさんの乳首って大きすぎるような気がする。トウジやケンスケが見せてくれる写真の女の人より一回りは立派だ。
やっぱり、吸われると大きくなるのかな?
いけないけない。ちょっと思い出して……勃っちゃった。
ふう。ミサトさんでは、久しぶりだから気持ちよかった。最近、綾波さん専門だったから。やっぱりたまには相手を変えないと刺激が弱くなるんだ。一つ勉強になった。
で、出張に不満そうな顔をしたら、ケンスケもトウジも一緒に行っていいと折れてくれたので、ネルフ本部からヘリで海上へ。
豪華なお船でクルージングなんて言葉を信じるほど、馬鹿じゃないけど、まさか空母に降り立つことになるとは思わなかった。
そこで僕は生涯で一番衝撃的な出会いをしたんだ。
惣流・アスカ・ラングレー。日本人とドイツ人とアメリカ人の血を引く、ものすごくかわいい子なんだけど……乱暴者なんだよなあ。
なにもしてないのにいきなりほっぺたを叩くし……そりゃあ、パンツを見たのは確かだけどさ。あんな風の強い甲板の上でミニのワンピース着ている方も悪いよ。
面と向かって言う勇気はないけど。だって、あの惣流さんにそんなこと言ったら、きっとキックの二、三発は食らうことになるだろうから。
ミサトさんに紹介された後もひどかった。「冴えないわね」だって。ほっといてほしいよ。別に僕とお見合いした訳じゃないんだし。
そのくせ、なんか加持さんとかいう人が来れば、猫かぶるし。
どうでもいいけどね、純和風のおしとやかな女性が好きな僕のタイプじゃないから。
綾波も変わっているけど、惣流さんも変だ。ミサトさんにしてもリツコさんにしても、ネルフの女の人って、みんな普通じゃない。見た目は美人ばっかりなんだけど……。
まあ、ネルフ関係の人とつきあう訳じゃないから、観賞用だと割り切ればいいか。
で、お約束のように使徒がやってきた。太平洋上で襲撃を受けるなんて聞いてないよ。
って言ったところで仕方ないけど、運がいいのか悪いのか、ちょうど僕は、惣流さんに無理矢理連れられて、空母から離れてエヴァ弐号機を輸送しているタンカーの上にいた。
使徒の襲来を知った惣流さんが、得物を狙う虎のような顔をした。「ちゃーんす」って聞こえたけど、なにがチャンスなんだろう? 今でもわからない。「ピンチ」の間違いだと思うんだけど、ドイツでは、チャンスと言うんだろうか?
「アンタも一緒に載るのよ」って惣流さんの紅いプラグスーツを渡された。僕がまごまごしてる間に惣流さんは、非常階段を半分下りた踊り場に着替えに行った。
ちらとのぞき込んでみたら、惣流さんはちょうどプラグスーツに下半身を入れ終わったところで、真っ白な背中と脇からおっぱいが見えた。
ちょっと屈み気味だったからか、結構大きかった。
僕も紅いプラグスーツに着替えたのはいいけど、惣流さんの体型に合わせてあるから、足は余るし、股間はきついし、胸には堅いふくらみ防護があるわ、肩幅は狭いわで、つらかった。
そんな文句を言うまもなく、弐号機にエントリーさせられて、訳がわからない内に使徒との戦いに参加させられた。
一つのエントリープラグの中で二人きり……
使徒を倒したことなんかどうでもいいや。僕にとってもっと大きなことがあったもの。
惣流・アスカ・ラングレー。
彼女の胸が触れていたプラグスーツ、彼女の太股が入っていたプラグスーツ、彼女のおしりを包み込んでいたプラグスーツ、なによりも彼女のあそこに接していたプラグスーツに僕は、素肌で触れた。
間接キスならぬ、間接接触……
彼女の肌のぬくもりに全身を包み込まれて、彼女と同じLCLに浸かる。僕の唾液と彼女の唾液が混じり合って、互いの口の中どころか、体の内側に入った。
本物のキスよりも深いところまで、混じり合う……
性格は大和撫子じゃないから、気に入らないけど、体は最高。
彼女の白い太股も、彼女のつややかな背中も、彼女のたわわな胸のふくらみも、彼女の桜色の唇も全部僕は知ったに等しい。
直接さわった訳じゃないけど、綾波さんの胸を掴んだどころじゃない、惣流さんのあそこと僕のあそこがぴったりくっついたも同然なんだ。
僕のここに彼女のあそこが押しつけられた。いや、彼女のあそこに僕のこれを押しつけたんだ。つるつるのプラグスーツの内面が、僕のこれに……うわっ、また勃っちゃった。
うっ………………
今日、二回目だけど、さっきのミサトさんの時よりも多いや。
スーツの感触の記憶で興奮するなんて、僕って最低だ。
読み終えたアスカはわなわなとふるえた。
「ア、アタシのヌードじゃなくて、プラグスーツに興奮したですって……。なによりアタシが好みのタイプじゃないだってぇ。ゆ、許せないわ。ええ。アタシは確かに純粋な日本人じゃないわよ。日本の血は25%しか入ってないわよ。でも、心は大和撫子のつもりよ。だって、アタシはシンジの奥さんになって、日本人になるんだから。故郷まで捨てて、アンタについて行こうとしているのに……好みじゃないですって」
アスカは、怒りのあまりに日記が8年前のものだと言うことを忘れた。
「教えてあげようじゃないの、アタシが、純粋な日本人女よりも遙かにいい女だと言うことを、たっぷりと体に刻みこんでやるわ。楽しみにしてなさい、シンジ」
アスカの目が、レイよりも紅く光った。