何気ない日だった。
シンジはいつも通り、学校から帰宅して食事の準備をし始めた。
アスカは先に帰ってきたはずだ。
今日は学校で散々な目にあった。
マナがサードインパクト後に苗字を変えて、シンジ達の通う第壱高校に入学してからというもの、毎日だ。マナは、ありとあらゆるしがらみから解き放たれたように、シンジによく絡んでくる。
それはそれで悪くは無い。
元々シンジは彼女の事を嫌いではなかった。彼女も戦自で自由を奪われていた身だ。自分も"ネルフ"や"エヴァ"というしがらみに捕らわれていたので彼女の気持ちはわかる。それに以前付き合おうとしたこともあったので彼女がシンジに絡んできても彼は特に嫌がったりはしなかった。
しかし、マナが来たことにより、アスカは以前以上に苛立ってシンジを睨んだり、きつい口調で辛辣な言葉を吐く。彼女らの間に板ばさみのようにされて、シンジにとってはかなり疲れる毎日だった。そういう時に、物静かなレイと話をするのは彼にとって一服の清涼剤だった。彼女はひたすら聞き役に回り、時々ぼそりぼそりと返事をしたり、言葉を返したりする。他の人から見ればレイは話題と表情に欠けている、付き合いにくい少女だったが、毎日、わりにお喋りな二人の少女の相手をするよりはずっと心が和む。特に一人はシンジにあからさまに嫌悪を表した態度と口調だったので余計に、だ。
しかし、その一人…アスカはシンジと一緒に暮らしている。家に帰れば嫌でも顔を合わせる事になる。高校生になってから、別々の場所に暮らすという話も持ち上がったが、何故だか彼女は出て行こうとしなかったし、シンジも今更何処かに行こうという意欲もなく、結局そのまま話は流れてしまった。
しかし、最近のアスカの態度にシンジはほとほと参っていた。
はっきり言えば険悪だ。
いつも険しい顔つきのアスカが辛辣な言葉を吐きながらシンジと接する。シンジはそんな彼女の言葉を一応、黙って聞くが、彼女が何故こんな態度を取り続けるのか彼には分からなかった。
夕食が出来た。
シンジはアスカを呼ぼうと彼女の部屋へ行った。
彼女は最近家に帰ってきたら真っ先に自分の部屋に行く。そしてファッション雑誌を読み漁ったり、ネットをしていたり、寝転がったりしている。
居間でテレビを見る…ということは最近無くなった。シンジとアスカの間には会話があるが、どことはなしに険悪だ。あまり長く一緒にいられないのだ。
シンジはアスカの部屋の戸を叩いた。
「アスカ、ご飯できたよ?」
…返事がない。
「アスカ?」
もう一度戸を叩いた。
返事がない。
「アスカ居るの?」
シンジは意を決して、彼女の部屋の戸を開けてそっと中を覗いた。
…居ない…。
シンジはふと、彼女の机を見た。
そこにはチケットらしいものが袋に入って置いてあった。
シンジは手にとって見たが、何処に行くためのものか分からなかった。
何せ行き先が英語らしきもので書かれているからだ。
しかし、その内容を良くよく読んでみたら…
「…ドイツ…ベルリン…かな?えっと…ブランデンブルグ…??」
…どうやらドイツ行きのチケットらしい。
どうしてこんなものがこんな所に…。アスカは里帰りでもするつもりなのかな?
シンジはそう思ってチケットをそっと机の上に置いた。
しばらくシンジは食事に手を付けずにテーブルに座っていた。
しかし、かなり遅いのにアスカは帰ってこなかった。
仕方なしにシンジは先に食べる事にした。
ご飯をついで自分の口に運ぶ。
ふと、一人で食べながら考えていたら、先ほどのアスカの部屋の、机の上に置いてあった航空チケットの事を思い出した。
一枚だけ。出発日時は…明後日の午後…。
シンジはギクリとした。
…アスカは…ドイツに帰る?
「ただいま~」
玄関から元気な少女の声がした。
アスカだ。
「あ…アスカ、お帰り…」
シンジはどもりながら言った。
「…は!!アンタ、私よりも先にご飯食べてんだ。」
アスカが冷たく言い放つ。
「…だって…アスカ、こんなに遅くなるなんて知らなかったから先に食べる事に…」
「あ、そ。
ああ、そうそう。私、もう食べてきたから。」
アスカはそっけなく答えて自分の部屋へ戻ろうとした。
「あ…アスカ…。」
「…何よ?」
「あの…」
シンジは先ほどの、ドイツ行きの航空チケットのことを言おうとした。
しかし、アスカの部屋に黙って入って勝手に見ただけのものなのに、あれこれ言うのもおかしいと思ってそのまま思いとどまって口をつぐんだ。
「…何よ。しけたツラして…キモチワルイわね!!いちいち呼び止めないでよ!!」
アスカは顔をしかめながらいつもよりもさらに棘のある言い方でシンジに言い放つとそのまま自分の部屋へ戻っていった。
…どうしよう…アスカは…ドイツに帰るつもりなの…?
シンジは食べかけの夕飯をそのままにしてダイニングのテーブルの前に立ち尽くした。
To Be Continued
アスカが片道のドイツ行きチケットを手に入たことを知ったシンジ、後はどうなる?
とか、一文書けばいいものを延々序章を書いてる私って相当おバカです。